純粋な児童畑でない児童担当(もやっている)の私が、何の因果かいくつかの小学校でブックトークを8本やることになり、シナリオを8本作ることに…それも1カ月以内で。
もちろん、児童担当が長い人や純粋な児童畑の人であればスイスイ出来ちゃうのでしょうけど…と愚痴りながら通常業務後や合間に本選びとシナリオ作成。
やり方によっては、被っている学年は共通って方法もあるでしょうが、基本的にブックトークしたもの+その他その学年にあった資料を貸出することにしていましたから、基本的に8本全部別なものを作ることになりました。
また、学校によってはボランティア団体が定期的に読み聞かせをしているので、それとかぶらないように…等々色々な条件付きでの作成でした。
ということで、今回は、ブックトークを依頼された時の作り方的な事が書ければいいなぁと。
今回の対象は1年×1・2年×1・4年×2・5年×2・6年×2の8パターンで、各クラス数クラスずつという状況でした。
8本のテーマはそれぞれ『たね』『てがみ』『石』『しましま』『高い』『算数』『音楽』『図書館』(もちろん、テーマとして出すときは単語ではないですよ。)でした。
テーマを先に書きましたが、実際はテーマを決めてから作ったわけではありません。
今回は実験的なこともやれたのは収穫でしたが、実験された方は楽しめたかどうか…(笑)
さて、今回は『しましま』を例にどんな風に作ったかというと…
まず、小学校の授業は45分です。30~40分、可能であれば30分以内で終わるようなものを作ります。
もちろん予定なので、ゆっくり読んだりすると軽く40分になってしまいますし、特別教室などで実施することになっていれば、移動と挨拶などで5分は使えない状態ですし。
最初にキーになる本を決めます。
キーにする本は自分の好きな本かこれは外せない(最初にテーマありきだった場合など)本です。
『しましま』でキーになった本は『ストライプ』(後段参照)です。
インパクトもありますし、中身は考えさせられるものですので、お気に入りの1冊だったりします。
で、その切り口をどうするか考えます。
今回は素直に「しましま」ですんなり決まりましたが、「変身」「変化」のようなテーマにも使えますし、中身としては「周りの目に左右されない」「自分の気持ちに正直に」ですから、教訓型のブックトークにも使えます。
また、「マメ」だったり「新学期初日」とかでも良いですし、「食べる」とか「困った」とか、切り口はたくさんあります。
でも、実際はこの時点ではテーマは決めていません。(最初は「変身」にしようと思っていましたから…)
次に何と組み合わせるか考えます。
イメージ的には1点に引ける直線はたくさんあるのと同様に、もう1冊を決めると方向性が決まります。
で、それぞれの切り口に合いそうなものを何冊か集めます。
そんな時、スズメバチに襲われた児童や園児のニュースを見たため、「じゃあ、今回は『しましま』かなぁ?」となりました。
それで、オープニングで紹介する本は「スズメバチ」が出てくる本です。
そういうことで、ハチやスズメバチの本がありますけど、その中から、『虫から環境を考える 5』(後段参照)をチョイスしました。
最初の方に蜂の子が載っているので「食べる」テーマにも変更できそうですし。
テーマが決まったら、その直線状になる資料をどんどん集めます。
「しましま」な服を着た海賊でも、「しましま」な動物でも、「しましま」なものでも何でも良いので集めます。
で、この場合は4年生に行くことにしたので、その前後が主対象になっている本を選びます。
この時点では、思いつくままに抜いていきます。(おそらくすぐに10数冊にはなるでしょう。)
一般的でない(?)私の作り方としては、それらの中から次のようなものを頭に入れて抜いていきます。
(1)キーになる本
(2)科学の本
(3)伝統的な本
(4)読み物系
(5)+1学年な本
(6)-1学年な本
まず、(1)はそのブックトークの中核を成す図書。
自分の熱弁をふるえそうな、その本であればどんな切り口でもわかるような本です。
思い入れがありすぎて、他が霞むのはいけませんから、ほどほどに…ですが、真ん中より後ろで紹介する、可能であれば最後付近で紹介するものです。
次に(2)。
ブックトークは、何も読み物ばかり(学校の先生は往々にして読み物を要求することが多いのですが)でありません。
読むのや文学が苦手という子もいますし。
「へぇ~」って思えることがあると話を気にしてくれますし。
で、私個人的に当面の問題の(3)。
児童畑の担当者がよく言う「長い間読み継がれている本」いわゆる「良書」と呼ばれるものです。(私は児童書は選択肢多数型と思っていますから…(たぶん、児童畑の人と堂々巡りな話になります。))
これらの中から選ぶのは色々な本で紹介されているので簡単なのですが、実際には困ったことがありまして…
ブックトークは基本的に、あまり普段は手に取られない素敵な資料を紹介するというのが目的です。
もちろん、「良書」と位置付けられた伝統的な本は、図書館の児童担当者に尋ねれば、紹介されるし、おはなしのろうそく系の読み聞かせ団体でもよく紹介されます。
悪くはないのは私も認めますので、あることは当たり前で良いと思います。
でも、そういう団体さんや児童担当者の活動が活発であればあるほど、そこの小学校で知っている子の率が上がります。
確かに、全員が知らない本を探すのは難しいです。図書館を利用したことのない子ばかりであれば別ですが。
出した時に「あ~知ってる~!」って言う子もいます。多くなければ「じゃあ、内容やオチは内緒だよ」って続けますし、多ければ「知っている人が多いけど知らない人のためにあらすじだけ紹介します」と読み聞かせから急きょ変更するパターンもありです。
でも、つい朝に読まれたかどうかがわからないことがあります。
図書館でおはなし会などをしているグループとは交流はありますが、学校オンリーの場合は全く知らされていないこともあったりします。
(4),(5),(6)はほとんど読み物(になってしまう…)なのですが、4年生であれば、3年生が読むようなもの1冊と5年生で読みそうなもの1冊を考えて入れることによって、読む量が少ない子や多い子にも対応しようということです。
で、その分類に合うように集めた資料を分けてみます。
続いての作業は『+1のつながりを見つける』です。
もちろん、今の例であれば『しましま』というキーは全部の資料に含まれますが、他の括りができないか考えます。
例えば、蜂のしましま→女王蜂→女王とか、「○○つながりで」と話せるようなものがあるといいなぁレベルですけどね。
それがあると、トークの繋ぎがうまくいきます。
もちろんつなぎ言葉はあるに越したことがないですが、なきゃないでどうにかなります。
実際にはうまくピースがはまるが如くってことはテーマを絞ると少なくなり、今回はちょっと失敗でしたが、以前書いた拙エントリーのは思ったように繋がりましたね…。
それから、繋ぎ方を考えて抜いたり入れたり組み替えたりしていきます。
基本的に前から後ろに繋がるものは後ろから前にも繋がります。
なので、後ろで繋がらなくなったら前にしちゃうとかで大丈夫です。
抜いたのはその回には使えませんが、学年を変える時とか違うテーマでやるときに取っておくことができるので、どこかにメモっておくと後で参考になります。
今回は8本同時進行だったので、「○○」のために抜いて来たけど、「△△」で使ったというのもあります。
例えば、『海賊の大パーティ』。当初、海賊ということでこの「しましま」に入れようと思ったのですが、うまく繋がらなかったので、「図書館」テーマに入りました。
というのも、2編あるんですよね、この本。「図書館」テーマでは6年生ということもあり、震災関係も盛り込んだので、これはお話、でも現実は…的な部分で使用しました。
で、おおよその話の流れを決めます。
私の場合、だいたいこの時にじっくり読みます。
この時点で入れ替えられてしまう図書もありますが、じっくり読むことによって、別の道が開けることもあります。
イメージ的には、色々な切り口でのネットワークが可能になるような感じです。
それから、時間に合わせて、どのページ(次に繋がりがあるものがあればそのシーン・写真は欠かせません)を紹介するのか、どのように(あらすじ紹介か絵をパラパラとするのか全部読むのか)紹介するのか紹介方法を決めます。
挿絵とかがあれば、見せながら紹介するというのなどはわかるでしょうが、高学年になるにしたがって、「紹介したい部分に挿絵がない!」って事態も出てきます。
そういう時は会話文を中心に…でしょうかね。
それで、流れを決め、シナリオを作成します。
・導入でスズメバチのニュースの話。
この時期にそういうニュースが流れるのにはちゃんと理由があります…
・『虫から環境を考える 5』 偕成社
蜂の子の食べる話をしたら、「え~っ!」が多かったです。日常的に食べる地域ではないですが、知らないことに逆にびっくりでした。
・『クモ』 今森 光彦/文・写真 アリス館
虫嫌いの人には「うわっ」って感じですが、節足動物(笑)繋がりで…予想通り男子は興味を持ってくれたみたい。
・くいしんぼうシマウマ ムウェニエ・ハディシ/文 西村書店
繋がりは動物ってくらいしかないけど、こちらは「しましま」から普通に想像される動物ということで、シマウマの話。
あらすじで説明し、最後の手前で「しましまの毛皮があったわけでないよ…」と興味を惹かせて次へ。
・クマは「クマッ」となく?! 熊谷 さとし/著 偕成社
シマウマ繋がりで、シマウマは黒地に白いしましまなのか白地に黒いしましまなのかの質問。
シマウマの写真を使って説明。
ついでに、この本には、縦縞と横縞の説明があるので、トラは縦縞?横縞?
という質問を投げかけ、説明。
・ウェン王子とトラ チェン ジャンホン/作・絵 徳間書店
他に「しましま」な動物という哺乳類つながりで、トラです。
もちろん、直前に縞の説明しましたしね。
これは読み聞かせで全部読んでみました。
・トラねこマーチンねずみをかう D.キング=スミス/作 あかね書房
トラねこということで、トラ模様繋がりですかね…
「この主人公のトラねこのマーチンはねずみが好きなんです!」って言ったら、予想通り苦笑。
マーチンがねずみを飼いたい理由のあたりを読んで、あとはあらすじで途中までの説明しました。
・月夜のバス 杉 みき子/作 偕成社
・小さな町の風景 杉 みき子/著 偕成社
それから、場を落ち着かせるためもあり、詩的なお話。
月夜のバスを読んで(ちょっと読みにくい部分もあったけど)、2冊同時に紹介しました。
もちろん「しましま」というのは、月夜のバスの横断歩道です。笑
・ストライプ デヴィッド・シャノン/文と絵 セーラー出版
落ち着いたところで、途中まで読み聞かせです。
「このあとどうなったでしょう?」的な質問を投げかけておしまいです。
終わったらこの本に殺到していたので、非常に興味を持ってくれたんでしょうね。
実際には、こんな流れでトークが長くなり、40数分かかったのですが、盛況のうちに終わらせることができました。
このテーマのが最後の回だったので、終わりよければ全て良しです。笑
裏のテーマとして「他と同じじゃなくて良いんだよ」というテーマ性を持たせようとしたのですが…今回はまぁまぁかな。
<今回特に印象に残ったもの。>
『たくさんのふしぎ 2010年1月号』福音館書店
内容を紹介したら子供の目が輝いていた感じでした。早く図書にならないかなぁ…
『ワシとミソサザイ』ジェーン グドール/作 さえら書房
内容はよくあるような話ですが、絵が良かったのか、興味を持つ子が多かった感じです。
『月のしかえし』ジョーン エイキン/作 徳間書店
実は以前の「7」をテーマにした時に見つけた本の1つ。読み聞かせにはちょっと長いし、学年も上の方の感じだったので、今回紹介出来て良かったなぁと。
『算数の呪い』ジョン・シェスカ/作 小峰書店
この本、主人公の切羽詰まった感を出すために少々早口で読んだのですが、一気に読む感じなので、1クラス目でかなり体力消耗したなぁ…(同じブックトークを連続して2~3クラスやりますので。)
ということで、トーネコ的ブックトークシナリオ作りのまとめ。
1.キーとなる本を決める。
基本的に自分の好きな本。絵本数冊と読み物数冊あれば多少学年がずれていても対応できます。
2.キーとなる本の切り口を色々決めておく。
切り口が多ければ多いほど後が楽。
3.時事等とキーとなる本を組み合わせてテーマを決める。
あくまで仮テーマ。集まる本によってはテーマを変えたっていい。
時事等は、最近のニュースの他、教科で習ったものに絡めたり、最悪、服装や見た景色・思い出などでも。
今回は東京スカイツリーとか○○の秋とか導入は色々でした。
4.導入紹介の本を決める。
探し方は、フリーワード検索、件名での上位語・下位語でヒットしたもののうち気楽に紹介できそうなもの。
5.導入紹介の本とキーとなる本の直線状にある本を集める。
この時は思いついたもの、検索したものなど何でも。
そして、
(1)キーになる本
(2)科学の本
(3)伝統的な本
(4)読み物系
(5)+1学年な本
(6)-1学年な本
に分けて考える。
6.テーマ+1のつながりを見つける。
それぞれの本でテーマの切り口以外の切り口を見つければ今後の作成も楽です。
7.繋げて色々並べて流れを決める。
盛り上がりは後半から最後が良いかと。
ここでどんどん削っていくのですが、削ったものも別の機会に活用できるようにメモ推奨。
8.周辺情報を調べてみる。
写真の見栄えが良い本や著者の略歴・作品などに目を通す。
9.シナリオとして文字にしてみる。
(読み聞かせ分も全文字化した文字数÷400×2+5)分くらいで概算。
大体6~10冊紹介できるけど、1コマ(45分)でなら6~7冊が無難。
10.開くページに付箋を貼って練習する。
以外に、ページをめくるとか、読み聞かせの間とか、質問と回答の間とかで予定通りにできないもの。
シナリオは覚えた方が良いけど、覚えてなくても、焦らない。だって、児童の反応を無視して淡々とシナリオしゃべってもつまらないですし。
不測の事態(子供の歓声がやまない。会場に遅れてくる。先生の紹介が長い。)も頭に入れておく。
11.調整して、準備万端になったら本番。
会場やその日の流れを確認した方が良いかと。
最後に色々思ったことや感じたこと。
・大変になることはわかっていたのですが、学校の希望通りの日程でブックトークを入れてしまったことと、各学校で場所がまちまちだったので、例えば移動教室で児童が来るまで待ちぼうけだったり、重い本の入ったオリコンをかついで3往復しないといけなかったり、その辺の学校との調整は密にすれば良かったなぁと。(来年度はもし依頼があっても詰め込みたくないなぁ…)
・私のブックトークはフリップを利用するのが多いのですが、それにプラスした小物の準備が間に合わなかった(変わったハガキとか、写真を撮ってくるとか)部分もあったり、実験的にCDを流すことをブックトーク内に埋め込んだら、流れるまでの数秒の間が直前までノンストップでしゃべっていたせいで異様に長く感じました。(ブックトーク後半に使用したので、最初に一時停止していてもそれが解除されてしまって…)
・基本的に私が作るブックトークはあまり汎用性がありませんので、いつでも使えそうなものをいくつか用意しておくと、今回のような状況に陥らなくても良かったかなぁと。(まぁ、今回のをベースに改良していけば良いことでしょうが。)
・あらすじの紹介をする場合、挿絵がほとんどないとき、ポイント押さえれば良いようですが、どうもそれだとただの「本やお話の紹介」であって「ブックトーク」と言えないような気分。(なので会話文とか読むとか試行錯誤していますが…う~ん。いわゆるストーリーテリングものを紹介する場合で、時間の関係でストーリーテリングしない時なんか特に。)
・児童書のレーティング(?)は欲しいところなのですが、児童畑の人が考えているレベルと実際の子供達のレベルは違うように感じました。(もちろん個人差が大きいですけど…)
・高学年になるほど、会話のやりとりを含めたブックトークが有効なような気がしました。
・クラスによって反応は違うんだけど、笑う所は笑って欲しいなぁ…騒がずちゃんと聞くようにという指導なのかもしれないけど、噛み殺した笑いがちょっと切ない感じでしたし。
・児童畑の人は困った時に頼りになるんだけど、もう少し新しめの本も教えて欲しいなぁ…
・Googleはやはり色々と組み合わせて検索できるから便利。でも、「おっ」と思った図書に限って自館になかったりする…笑
・色々な人のブックトークのブログとかを見ていましたが、レファ協みたいにシナリオ込みでアップする場所があると便利かなぁ…と。(楽したいわけでなくてね(笑))
・私のブックトークが正統派(?)のブックトークにならないのはおそらくバックボーンに知識のストックがないことなんだろうなぁ…と少々反省。
・大変だったけど、「この本をこっちのテーマでやってみたい」とか思えるようになったのは一歩前進?笑
今回ブックトークの作り方をテーマに書いてみましたが、児童畑の担当者からすれば、まだまだな選択方法だと思いますが、確かに同じ図書館員でもプロとセミプロもしくはアマくらいの差はありますよね…
ただ、広く深く関わることができれば申し分ないのですが、このご時勢、そうもいかなくボランティアさん任せになっていたりしている図書館も少なくないと思います。
なので、これを読んで「やれそう」とか「ものは試し」とブックトークをやってみようとする職員が増えるといいなぁと思います。
最初は色々あるブックトーク本のシナリオ通りにやってみる。
次にその中の1冊を変えてやってみる。
もう1冊変えてみる。
ということを何回かやってみれば、ブックトークのイメージを作ることができると思います。
基本的にブックトークは場数だと思いますし、紹介する本を読み、文字にしたシナリオを確認すればなんとかやれるのではないでしょうか…
切り口の多様性とジャンルの広がりを持たせるのはその後かなぁ?
ということで、児童畑の人ならば教える立場でしょうが、私だとまだまだ教えられる立場なのでアドバイスになっていないかもしれませんが、学校などへの『出前ブックトーク』みなさんもいかがですか?
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