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図書館と著作権法を考えてみる

以前の記事で、「貸出の有料化」について気の向くままに記入していたら、友人が「有料化できるなら儲かるのだし、そうすれば良いのに…」と話していましたが、貸出の有料化だけで済むのなら、おそらく始めているところもあるのでしょうが…
結論から書くと、『別のお金がかかってくるので儲からないかも?』(結論と言いつつ疑問形…笑)です。
それは、図書館が貸出をしているのは、著作権法の第三十八条の4『公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。』という条項を盾に、もちろん「貸出も無料だから営利を目的としていないから貸与しますよ」という図書館法も添えて、運営しているからで、貸出を有料化して、そこで利益得ようなんて、なかなか難しいものなのです。
もちろん、2005年までであれば、図書の貸与権が免除されていたので、大丈夫だったのですが、改正されたので、著作者の要求に応じた著作権料を支払う義務が出てきます。
そうすると、有料化分に上乗せして利用者に支払ってもらわないと、有料化したはいいが、大赤字ということにさえなってしまいます。
有料化論議の難しいところは、おそらくそこなんでしょうね。
だいたいいくらくらいになるかというと、おそらく一概には言えないでしょうが、定価の半値前後を納めるか、貸出ごとに定価の8%前後のようなので、図書館的には前者じゃないと泣きをみますね…
もちろん、映像資料(ビデオやDVD)の補償金のように、お店屋で2,980円で売っているDVDが図書館向けに16,000円で館外貸出権付で販売されているような状態になってくると、図書館としてやっていけないですよね。

諸外国では、図書に関して公共貸与権のような制度のある国もあります。ただ、日本の現状でこれを導入すると、必ず資料費削減が待っています。確かに、『UNESCO(ユネスコ)ガイドライン』に『大切なことは、公共貸出権にかかる支払いに要する資金を図書館の資料購入費から支出するべきでない』とありますが、いくら「公共貸与権で必要な分を別に予算付けしてくれ」と言っても、ただでさえ資料費削減を目論んでいる行政側にすれば「図書館事業なんだから」と言って実質削減されます。
日本文藝著作権センターでは、国が基金を作ってそこから云々と言っていますが、まず基金を作る目処も立っていないと、机上の空論になりかねません。
まぁ、個人的には極論ですが、図書館では文芸作品を置かないとか、図書館で所蔵して欲しくない著者は著書に表明しておくとかするとスムーズなんじゃないでしょうか。
例えば「この作品は図書館での貸出やレンタルを希望しません。図書館などで貸出を行なうために所蔵する場合は貸与料を下記までお納めください。」みたいな文を奥付に明記しておけばいいじゃないでしょうか。
現在、DVDなどの補償金みたいに、図書館で置いて欲しくない著者は貸与料を付けて、館外貸出可の場合は定価の○倍とかの方式も良いでしょう。
DVDみたいに、作品に魅力があって、金銭的に余裕があれば、その図書も購入しますし。
逆に、図書館に置いて欲しいまたは置いても構わないと思う著者は、現在のように定価のままで館外貸出可をつけておけばいいんですし。
そうすれば、図書館に置くから収入が得られないと述べている作家達にも合理的でしょう。

ただ、ちょっと気になるのは、図書の定価。
年々、販売金額は減っているのに、出版点数は増えているという話をこちらの『かたつむりは電子図書館の夢をみるか』というブログ(http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20080302/1204482354)で拝見しました。
ということは、じゃんじゃん出版して、ある程度売れれば、儲けが出るということなんでしょうかねぇ…
普通なら、売れそうなものだけ出版しようとかすると思うんですが…
それなら、定価を1.5倍くらいにして、図書館の公共貸与権分や新古書店に売られて利益を得られない分などを回収すれば良いのではないかと…

話は脱線しましたが、図書館は著作権法に案外縛られてしまっているというところから、話をはじめてみました。

さて、現在の図書館で著作権法が関わっている例としてあげられるのは、複写サービス。
これが現場では意外とやっかい。
というのも、著作権法31条で
『図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この条において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
一  図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個個の著作物にあつては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合
二  図書館資料の保存のため必要がある場合
三  他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合 』
と定めています。

利用者との関連で言うと、
まず、「調査研究の用」って誰が決めるのでしょう。いくら営業風の方が来ても「個人的に調査をしたいので」と言われたら図書館的には認めざるを得ません。
次に、著作物の一部分ですが、貸出可の資料はコンビニでいくらでもコピーができてしまいます。もちろん、図書館職員的には「借りてコピーすれば良いですよ」なんて言えません。笑
まぁ、借りられない資料はどうしようもないんですが。

雑誌関連でいうと、
まず、最新号の複写については31条の二の( )の部分の解釈がいまだにわかれる…
つまり「発行後相当期間を経過しなければ、(雑誌の最新号は一切)複写ができない」ととるか「雑誌の最新号といえど公表された著作物なので一部はOK」ととるか。
もちろん、図書館員にとっては周知の事実ですが、雑誌は全部が一著作物というわけでなく、たくさんの著作物の集まりなので、最新号の複写の場合わかりやすく言えば記事の一部分のみとなるわけで…
じゃあ、記事のどこまでが一著作物かと考えると…小さな囲み記事も半分未満!紙で隠してコピーするのもなかなか大変です。
まぁ、図書館によっては最新号の複写不可ってしているところも多いですけどね。
(ちなみに、条文で『著作物を複製することができる。』とありますので、一切複写サービスをしないのも、複写不可の制限をかけるのも図書館の運用によって大丈夫なんです。)
(ついでに、複写機器メーカーの方に「コピー機に液晶プレビューをつけて、コピー可能な部分だけ指定できる機能を」と要望したことがあります。その時は「まぁ、やるならパソコンのスキャナで取り込んでって感じですかねぇ」と流されました。笑)

著作物関連でいうと、
背表紙のタイトルは保護されない派が多いですが、「背表紙にその幅で絵や写真があったら(週刊のマンガで号数の上にキャラが描いているみたいな)、やっぱりだめなのだろうか…」とか、「CDについている歌詞は歌詞で一著作物だけど、曲解説は一曲ごとに一著作物?でも、冊子状だから歌詞の部分を除いた部分の半分未満で一著作物?」とか、「当日の新聞は著作権法云々で複写できないみたいだけど、見出しだけのコピーはいいんだよね?(見出しが保護されないとの判例から)」とか、「両面広告は両面で広告として成り立っているのだから、片面はコピーできるのか?」とか、細かい事例を出していけばきりがないくらい、判断に迷うことがあります。

といった感じなので、著作権法をしっかり学んだ図書館司書でさえ、意見が分かれたり、迷ったりしていますので、一般利用者にはやはりわかりにくいものなのかなぁと。
これらの議論や考えについては、おそらく時々このカテゴリーに書いていこうと思っていますが、最後にこれだけ書いて今日は終えようと。

それは第2項と3項の『図書館資料の保存のため必要がある場合』と『他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合』なのですが、結論から書くと「16ミリフィルムのデジタル化は図書館でやったらだめ?」という疑問。
「図書館等の図書、記録その他の資料」の資料に映像資料は入っていないと言えばそれまでですが、図書館法では「郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード及びフィルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視聴覚教育の資料その他必要な資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。」とあるので、図書以外に映像資料も含む解釈なのですが…
16ミリ映写機自体、今は相当入手困難ですしねぇ…
やれるけどお金がかかるからやっていないというよりは、どうも著作権法とか何かの都合でまだ可能でない雰囲気なんですが、アメリカだと米国著作権法108条だかに館外貸出不可の条件が付きますが、固定媒体が旧式になったときに複製できるみたいですし…
日本ではどうしてやらないorやれないんだろうと、前から疑問だったりします。
教育フィルムとか良い作品が再生機がないために見られないとなる前に、デジタル化できるようにして欲しいもんです。

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コメント

トーネコさん、はじめまして!著作権フリーライターのタイゾーといいます。このブログのテンプレート、おいらが最初に使っていたのと同じだぜ★

おいらのブログでは、図書館と著作権についても書いているので、もしよかったら見てやってください!

ピリ辛著作権相談室
http://urheberrecht.cocolog-nifty.com/blog/

投稿: タイゾー | 2008年8月30日 (土) 23:03

タイゾー様、はじめまして。
『ピリ辛著作権相談室』拝見させていただきました!
非常に詳しくわかりやすく書かれていて、勉強になります。

なかなか細かいところまで、判例がないことも多く、解釈によってグレーゾーンも多いような感じもするので、白黒はつけにくいのですが、著作権って奥が深いですよねぇ…日々勉強です。

独断と偏見的な間違った解釈をしてしまうかもしれませんので、その時はビシバシ指摘してくださいね。

投稿: トーネコ@管理人 | 2008年8月31日 (日) 11:12

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