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図書館法と資料利用の対価?

図書館にいる人間としては常識ですが、公立図書館は図書館法っていうのに定義され、その17条で「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」ということで、通称「無料の原則」なるものがあります。

もちろんこれは「文字・文化の恵沢を、あらゆる人が享受できるよう保証する」ってことで、私としてはとても優秀で素晴らしい条文だと思います。
これはいつまでも残っていてほしい条文ではありますね。

さて、草加市で『図書館図書の有料貸出について』(http://www.city.soka.saitama.jp/hp/menu000002300/hpg000002293.htm)で、文部科学省がユネスコ公共図書館宣言1994年の例(公共図書館は原則として無料とし、地方および国の行政機関が責任を持つものとする。)をあげていますが、何も有料がだめとは一言も言っていません。
原則ですしね。

じゃあ、図書館法17条に抵触するかどうかと思うと、微妙な表現の解釈が出てきます。
そう、「資料利用の対価」です。
図書館を「無料の貸し本屋」だと揶揄する人たちがいますし、確かに貸出数を重視する人たちもたくさんいます。

資料を利用するとはなんでしょうか…

その本を閲覧するだけでも利用できる状態であると言えます。実際に貸出しない貴重本もレファレンス用資料も閲覧は可能でしょうから、ちゃんと無料で利用できる状態にありますし、出張で初めて来たからと言って入館できないわけでもなく、入館料も取っていないので、貸出しないことは問題ではないでしょう。

では、貸出を有料にすると問題でしょうか?
確かに、貸出という利用の仕方であるという考え方もありますけど、多くの図書館が自治体内および周辺自治体の住民にしか貸出をしていないことや、先ほどのように貸出しない資料もあるとすると、無料で閲覧できるまでが対価を徴収しない通常利用と考えて良いような気もします。

でも、世界的にみても公立図書館で貸出に関しては有料のところは、郵送貸出の実費負担以外聞きません。

つまり「図書館の資料」で、その「直接利用」は「無料」という解釈なんでしょうかねぇ…

そういう点では、私のような若輩者より、見識の深い方々がたくさんおられますから、この議論はきっとあちこちですでにされてきているんでしょうね…

ところで、図書館員を悩ますひとつの問題に、利用者の延滞問題があります。
それに対する督促電話やハガキ代を徴収するって話を私は聞いたことがありません。
外国では予約資料の取り置き料のような手数料を徴収しているとこもありますが、日本ではそれもありませんけど。

そこで、ふと思ったのですが、よくコインリターン式のロッカーがありますよね?

その表示を見ると、100円玉という媒体が必要なのに、無料ロッカーと明記している…
ってことは、図書館でも資料を返却するまで預かり金を徴収して良いのではないかと思ったりもします。
全部返却された時点でそのお金も返却ということで。
確かに実務的にはお金のやり取りが出てくるので、面倒そうな気もしますが、延滞したらお金が返ってこないとかにしておくと、案外、期限内に返してくれる人も多いはずです。

また、「そのお金のない人は貸出しを受けられないじゃないか」とおっしゃる方もおられるかもしれませんが、その町に住んでいても住所変更していない人や貸出可能住居範囲外に住んでいる人に貸していないのと大差ありませんよね?
それに、延滞資料があると貸出停止にする場合もありますし。

もし、全ての人に貸出もし、延滞しようが貸出停止にせず、住所が不定でも貸出してくれる図書館があるのであれば、「図書館の資料の貸出も全ての人に提供する利用の1つ」と思えますが、そうはいきませんし…。

そうすると、「対価を取らない」という考えの中には、対価さえ取らなければ、貸出可能な人と不可能な人は制限して良いということになります。

それを踏まえて次の考えですが、「図書館の貸出を受けようとする者は、図書館における利用講習を受けた上で貸出利用券を受け取ることができる」というのでも良いんですよ?
運転免許証と似たような方式で、延滞などの違反点数が多くなれば、利用停止や違反者講習を受けないと貸出できないことになったりするような感じです。
利用券発行の実費は(再発行の時などですが)取っているとこがあるので、講習時の発行料として徴収しても悪くはありませんし…

この講習によって利用者教育もできますし、本の貸出返却だけでない図書館の利用方法をよく知るきっかけにもなり、一石二鳥かと。

話は舞い戻って、「無料の原則」ですが、どうも「無料の原則」が一人歩きしてしまい、図書館で行なう講座は無料でないといけないとか、有料外部データベースの利用も無料でないといけないとか、なんでもかんでも無料としようとしている人たちがいます。

コピーについて実費OKというわけですし、実際には外部データベースは外部のなので有料としているところもあります。
実費OKということは、本来であれば資料自体にもバーコードを付けたりブックコートをしたりというお金がかかっていますし、もちろん資料の価格も実費です。

そこで、「対価」とは何かともう一度考えてみると、「相手に与えた利益に対して受け取る報酬」のことなのですが、コピー機の実費(紙代、トナー代、電気代)と同様、貸出時のレシート代やシステムの電気代はかかっていますし…

例えば書店の場合、「立ち読みお断り」の張り紙は確かにありますが、立ち読み代は請求されることはありません。金銭の支払いは購入という所有権移動の利益に対する報酬ということですし。


ということで、私は個人的に、資料利用の対価が無料というのは、『その図書館の所蔵資料をその図書館に行けば閲覧できる』(ただし、貸出されてなければ)というところまで無料で、貸出は受益者負担で良いと思うのですが…いかがでしょう?

宅配貸出や他館資料の取り寄せが有料のところもありますし、歴史的に見ても、元はチェーンで持ち出されないようにしていたっていうのを家でも読めるようにしただけですし…

その代わり、いつでも読めるように、24時間とは言えないまでも、夜間まで開館しなくてはいけないでしょうし、有料化することによって、小さい子からも徴収するのかとか、徴収方法や金額などの問題や、ゆっくり読書ができる環境(閲覧席や個人ブースの問題)かどうかという問題も出てくるでしょうし、「金払っているんだから云々」というクレームもあると思いますが、館外貸出は特定の人の受益だし、これによって督促経費も請求しやすくなるでしょうし、物損関係の保険にも入れるかもしれない…

もちろん、入館・閲覧は無料にしないと本末転倒ですし、館外貸出有料にしても、無料のまま突き進む図書館もあって良いと思いますけどね。

最後に、私自身、有料化信者ではありません。無料のままでも良いと思っています。
けど、財政難だから云々言われて資料費が削減されるのなら、何か収入源も…と思い、他の図書館でみかける、喫茶店付図書館やグッズの販売といった多角経営ではなく、図書館法などはそのままに、図書館としてどうお金を集めるかと考えたからです。
図書館の運営方法はいくらでもあるんでしょうが、手始めに『無料の原則』を考えなおしてみました。
要は、モノの見方は多面的にということ。笑

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コメント

はじめまして。
原稿を書くときに図書館無料の原則について調べようとググったらこのブログにたどり着きました。
興味深く拝見させていただきました。

図書館資料を有料で貸し出すことはいいんですが、著作権法38条4項(非営利・無料の場合の無許諾貸与の許容)が適用されなくなりますので、事実上貸出サービスができなくなってしまうと思います。

これ、どうしましょうか?
もしいいお考えがあったら教えていただければ幸いです。

投稿: cityheim | 2009年10月 8日 (木) 14:50

> cityheim さん
はじめまして、コメントありがとうございます。

はい、その条文は無料ではないために、適用されません。
ただ、無許諾の貸与ができないだけで、貸与権にかかる
補償金を支払うなど、許諾を受ければ貸し出す事自体は
可能です。

補償金分、有料貸出金額に上乗せするかどうかは、その
図書館によることになるでしょうね。
最近のレンタルコミックなどは、この手法で貸出しているので、
難しいことではないと思われます。

以前でしたら、図書などの貸与権は考えなくても良かったの
ですが、今は必要なので、現在の公立図書館は、その条文
に頼ってしかお金がかからない方法がなくなってしまいました。

投稿: トーネコ | 2009年10月 9日 (金) 10:56

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