いじわるな複写~著作権法の解釈の間で~
図書館における複写(コピー)サービスは著作権法31条で成り立っています。
(図書館等における複製)
第三十一条 図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この条において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個個の著作物にあつては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合
二 図書館資料の保存のため必要がある場合
三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合
ということで、利用者個人に絡むことでいうと、
1.「図書館資料でない(図書館で所蔵していない資料)のコピーはできない」
2.「営業目的の人はコピーさせてもらえない」
3.「発行後相当期間が経っていない定期刊行物は、全部コピーできない」
4.「全ページコピーなど一部とは思えない量のコピーはできない」
4.「友達の分や保存用としてもう一部のコピーはできない」
ということになるわけです。
具体例だと、
1は、「自分のノートや友人のノートのコピーなどが図書館のコピー機でコピーできない」とか、「インターネット端末で見たページの印刷は自由利用マークなどがない限りできない」とかです。
2は、「会議に使うからこのページが必要」とか、「営業でまわるからゼンリンの住宅地図のコピーをしたい」とかです。
3は、「最新号の雑誌の記事が1ページだからといってコピーできない」とか「今朝の新聞の記事のコピーができない」とかです。
4は、「全100ページの本で1~51ページのコピーができない」とか「全部で100ページだけど、25ページの短編が4つある本で、1つの短編丸ごとコピーができない」とかです。
5は、まぁ、すでに具体例ですけど…
補足説明が必要そうなところは、3。
定期刊行物とは週刊誌、月刊誌、季刊誌などの雑誌類や新聞などが主な対象です。
図書の多くは(短篇集とか作品集を除いて)1冊で1著作物が多いので『一部分=半分未満』という認識なのですが、雑誌については、それぞれの記者などが寄稿した著作物の集まりという考えなので、発行後相当期間が経っていない、つまり最新号は、例え全体で100ページあるうちの1ページであっても、それが1著作物(1つの完結する記事)であれば、1ページ丸々はできないということです。
だから、例えば、月刊誌の最新号を読んでいて、その記事が3ページあり、1ページだけコピーしたいのはOK(この場合2ページは×)って感じです。
逆に、発行後相当期間を経っていると考えられる次の号が出たときには、100ページあったらその3ページの記事でも、10ページの記事でもコピーできるということです。ただし、やはり全体で51ページのコピーはできませんが。
あ~、大前提を書きそびれていました。著作権法上、保護された著作物の場合っていうのと、『図書館は著作権法に基づいた複写を必ず提供しなければいけないというわけでない』ということです。
つまり、『著作物を複製することができる。』とあるので、『しなくてもよい』なのです。
具体的には、コピー機に耐えられないような貴重書のコピーなども拒否できますし、「最新号は記事の一部でもさせない」という判断も可能なのです。
ついでに、この複製行為の主体は図書館なんです。なので、利用者の複写申し込みを受けて、図書館職員(司書)がコピーするのが、正当な手順。
えっ?セルフコピーさせている図書館が多いって?
それは、申し込み時の複写可能チェックと、複写後のチェックは職員がやっていませんか?
そのチェックがあるので、著作権法上違反のない複写が行なわれていることを確認しているんです。
ので、申し込み書がなく、複写後のチェックもない図書館は、ちょっと危険かもしれません。笑
それを踏まえて、今日の話題。
貸出可能な資料は「こういうコピーは可能なのか?」と聞かないで、貸出手続きをして、コンビニへ…と内心思うこともよくあるのですが(笑)、聞かれたらちゃんと答えないといけません。
でも、その判断はもしかすると他の図書館では違うかもしれないし、解釈が異なれば違う判断になるかもしれません。あくまで以下は私の個人的な考えによるものですので、お間違えないよう!
まずは逐次刊行物、つまり雑誌や新聞から考えてみようかと。
最初に、よくある雑誌最新号の絡みから。
週刊誌などの記事が1つの著作物というのは、案外わかりやすいですが、「時刻表の最新号の1著作物の範囲は?」とか「TVガイドとかの番組表は?」とか悩ましいことが多いです。
時刻表は、欄外のミニコラムなどを除くと、列車の通過時刻が記載されているだけなので、時刻表の部分自体は大丈夫のような気がします。
が、見やすく編集されている点で創意工夫があるという意見もあります。
でも、そうすると、時刻表部分に関しては全体で1つの著作物と考えられるので、時刻表部分全体の半分まで最新号でも良いのではないかなぁと思っています。
そうすると、同様に電話帳なんかもそんな感じになるでしょうか…
では、TVガイドなどでは、番組記事はもちろんその個々の半分なのでしょうが、番組表自体は個々の番組だとかTV局ごとでなくても良さ気です。でも、その番組表を良く見て、ドラマ系だとあらすじが書いてあったりすると、そこはだめかなぁと。
他にも、囲碁などの雑誌付録に付いている名人戦棋譜集とか、料理のレシピ部分だとか、編み図だとか、なかなか難しいところが多いです。
個人的には、今例にあげたものでは、棋譜集の棋譜そのものは事実だから良いと思うけど、棋譜図や解説部分はそれぞれ1著作物って考えようと思うし、レシピ自体は「え~っこんなの入れるの!」ってくらい創意工夫があればだめでしょうが、著作物性が少ないように思えますので、『書き写すのは』良いかと。(たぶんにもれず、写真とかが写りこむような気がするので)
そして、編み図は、図なので、1つの著作物かなぁと思い、最新号だと図1つ1つでその半分にしています。
次に最新絡みで、新聞ですが、最新号は(「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」以外の記事は)その個々記事の半分となるので、新聞という性質上、ほぼ無意味な複写かと思います。
でも、「この記事の半分だけ複写」っていうのは可能ですし、新聞の見出しはあまり著作物性が認められないようなので、俳句や川柳っぽい見出しでなければ、複写できると思われます。
それと朝刊と夕刊はよく見ると同じ号数ですので、次の日になると、全体の半分はコピーできますが、本の上下巻で、上巻一冊丸ごと複写できないように、朝刊は朝刊、夕刊は夕刊でその半分となるんだろうと思います。
逐次刊行物ということで考えると、白書とかも最新号はやっぱり個々の記事の半分なのかなぁと思ったりしていますが、本の半分までってしている図書館が多いですね。
他には、「雑誌の最新号の目次は?」という例もあるのですが、目次を著作物だと思いたい私の気持ちとは裏腹に、どうも図書における目次は著作物性が少ないようで、同様に、雑誌も考えられそう。
でも、複写ということになると、人物の顔写真とか、特集を組んだ写真が目次ページにあることが多いので、複写はNGのパターンが多いかなぁと思います。
あと、付録類は本誌とは別に一つの著作物としてまた考えることになります。(最新号の場合はまたその中の個々の記事の半分)
ということで、逐次刊行物について考えるのは今日はこれくらいにして、次に、図書館で大半を占めるであろう図書。
で、図書で判断に困るのが、表紙のコピー。
読み聞かせのお知らせや図書館便りの図書紹介などで、よく使われる表紙のコピー、新書系だと表紙が単色で文字のみって場合が多いから(タイトルや著者名自体は著作物ではないので)コピーできるのはわかるけど、絵本だと絵ですし、最近の単行本だと写真も多いから、だめだろうなぁと。
でも、出版社に問い合わせると、案外、「そういう使い方なら良いですよ」って返事がもらえるので、大丈夫っぽい気もするんですが…要各社問い合わせですね。
図書では他に、途中に付いている折込地図のコピー(ページが付いていれば一枚裏表大丈夫だと思う)とか、取り外しても使えるようになっている旅行地図(これは付録扱いで付録の半分かなぁ)とか、先にあげた目次や索引のコピー(大勢はOKのよう)などが多くて悩まされることがあります。
ついで、複写ページ途中にある楽譜や歌詞(本来、楽譜・歌詞は一曲で一著作物なので、それぞれ半分)の著作権保護期間か否かの判断をしないといけないことなどがちょっと大変かなぁと。
(細かいの(コピー機の上に本の背を並べて、全部コピーする時、申込書と許可の出し方とか)をあげるときりがない。笑)
他の図書館資料の例をもう少しあげると、CDのジャケットの複写や、裏面の曲リスト、中の曲解説の複写の他、DVDのジャケットの複写とか、紙芝居の裏面(説明面)の複写なんかも悩まされます。
ジャケット自体はCDの場合、一枚なので、一枚物の写真や絵が同一性保護を理由に複写不可としていので、多くは写真があるので、不可(もちろん字しかないのはOK)ですが、曲リストがちょっと難しい。
CDケースの裏面をそのままだと写真が絡みそうであれば、中の曲解説の1ページ目に大抵あるのを目次の類としてOKかなと。
中の曲解説は歌詞部分はそれぞれの半分で、解説自体は、全体の半分までOKかなと。
DVDのジャケットってCDと同じに考えたいですが、「これって表・背・裏って一枚になっているよね?その半分って考えじゃだめ?」と言われると、ちょっと躊躇しますが、ケースに巻かれている状態では、表は表、背は背、裏は裏ですし、同じ理論が本のカバーにも言えるわけでして、写真などがあるならNGってことで。
紙芝居の裏面は、その作品が12場面だったら12場面で1つの著作物と考えると、1枚は図書の1ページみたいなものなので、この例だと6枚未満なら可ってところでしょうか?絵の面はやはり、同一性保持権ってこともあり、NGかなぁ。
最後に、あまり新聞の折り込み広告を閲覧できる状態にしている図書館は少ないかもしれませんが、その広告のコピー。
よくあるのが、求人広告のコピーなんですが、最新号(当日の広告)の場合、やはり各社の募集を1著作物と考えた方が良いかなぁと思います。(なので、その半分。)
スーパーの広告だと「きゅうり3本99円」のきゅうりの写真と値段が1著作物って考えられにくい(正確に書くと写真があれば1枚でも1著作物ですが…)ので、1ページの半分認めようかなぁ…と思ってみたり、でも、日替わり品は一つの記事かなぁと思ったり、あ~でも、裏表で一つの広告だと考えると表1ページとかOKかな?と思ってみたり、定まりません。でも、おそらく電話で聞いたら「全部しても良いですよ」と言われそうな…(相手は広告が周知され、中の商品が売れれば良いので、あまり考えていないかもしれませんし。笑)
こんな感じで、図書館司書は頭を悩ませていたりしています。(うちだけか??笑)
似たような絡みで、『図書館で私物のスキャナ(もしくはカメラ)使って良い?』(30条の絡み)とか『31条以外の複写は館内のコピー機で複写許可してよいか』とか、この辺も後々忘れなければ書きたいなぁと思いながら、今日は「世の中には変わったコピーのする人もいるんだ」と思っていただければ。
もちろん、図書館が許可する許可しないは前述のように図書館の運営によるので、「これにこう書いてあっから、複写させーや」とか、ちょっといじわるな複写はやめてくださいね…笑
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