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選書ってどうする?

前回に引き続き、選書関連。
うちの図書館で選書するときはメインに図書館流通センター(TRC)の『週刊新刊全点案内』を利用しています。
これが良い悪いは別にして、近くに大型書店のないうちの図書館では、かなり助かっているのは事実です。
例えばvol.1584号では1375冊の情報が載っているのですが、実際にうちの図書館で購入するのはその何十分の一になります。
そこで、私たち司書が予算や蔵書構成、需要などを考えて本を選んでいくのですが、少ない人数ということもあり、上記のようなまとめたものがなければ、全部に目を通すことは叶いません。
もちろん、この号が1375冊であって、毎週同じくらいの量が新刊として載っていますし、あまり流通に乗っていないものや、コミック類などは最初からこの手の本に載りませんから、他の新刊情報はインターネットを利用するとか新聞の書評を見るとか、アンテナを張り巡らせなければなりません。
そう考えると、選書ってなかなか大変な気が(実際にはやっていますが)します。

その選書の判断になるはずなのが、各図書館に成文化されているだろう「収集方針」や「収集基準」。
でも、インターネットなどで確認すると「…を広く収集する」とか「バランスを考慮しながら…」とか、ちょっと抽象的な感じもします。
おそらく外に出ていない内規みたいなものもある図書館もあるのでしょうが、抽象的であるが故、「図書館にそれはちょっと…」という購入リクエストや寄贈のお断りにも使われているような気もしますし、逆に付け入る隙でもあったりするのでしょう。
前回も書きましたが、知る権利的需要としては、「来年の運勢についてあの占い師はなんて書いているのだろう?」とか「あの漫画の最新巻を読みたいなぁ」というのもあるでしょう。
もちろん、実際に、リクエストを受けて購入している図書館もありますし、それはそれで、良いことだと思いますが、予算的にちょっときついかなぁ…
図書館としては、自分のところにない資料でも他館にあれば借り受けて利用者に貸出することができます。(それを相互貸借と呼んだりしているのですけど)
ただ、本来の定義的には「自館で購入努力をした上で、購入できなかったもの」を借り受けることになっているはずなのですが、最新刊を「貸してね」とFAXが届くことも多々ありますので、少ない予算を融通しあっているような感じですね。

話がちょっとそれましたが、「じゃあ、抽象的な収集基準からどうやって選んでいるか」です。
たぶん、経験と直感。笑
書誌情報と要旨くらいしか書かれていない『週刊新刊全点案内』などで、「あ~この本にはこういうことがあるのかなぁ」と想像し、時間があるときには書店に出向いて立ち読みし、購入しようかと会議なり話し合いをするのですが、時間がないときは想像&ディベートみたいな感じで同意を得て発注します。
時々、「あ~想像と違ったや」ということもあるのですが、慣れてくると想像通りってことが多くなります。
では、小さい図書館であまり経験のない司書が1人しかいないときに、適当に購入して大変なことになっているかいえば、そんなことはありません。
『週刊新刊全点案内』では★の数などでサポートしていることもありますし、有名な著者を抑えておければ、大きな間違いは少ないですし。
まぁ、それじゃまずいので、この著者はこういう関連の本を多く書いて定評があるんだとか、この著者はこの分野の権威だとか、この出版者(出版社)はこの分野に強いとか、そういう情報を仕入れ、覚えることによって、より図書館的(?)な選書ができるようになります。
いくら直感といっても、パッとページを開いて「これ買おう」はないでしょうから、選書する司書の頭には何らかのフローチャートのようなものがあると思われます。

ちょっと『図書館的』って言葉を使ったので、ついでですが、図書館は知る権利を満たすための機関だとして、理想は全資料を所蔵することなんでしょうが、まずそれは不可能なので、図書館ごとに分野のバランスってあると思います。
例えば、都市部では起業とかの需要があるからビジネス関連やコンピュータ関連の資料を増やすとか、こちらの町では園芸が盛んだから園芸書を増やすだとか、そういう特徴が各図書館にはあるのでしょうが、平均的なバランスってやはりあると思います。
もしかすると私の勉強不足かもしれませんが、○類が蔵書の○%だとか、理想的なバランスがすでに決まっているのであれば、まずはそれが新規図書館の指標になるでしょう。
それがきっと図書館的なんでしょうね。

話を戻して、そのベテラン司書の頭にある経験や直感にいたる経過を、明文化して、それをデータベースにまとめるとどうでしょう?
一点一点、これを購入しない理由…もちろん予算がないというのはわかりますが…をまとめていくとか、例えばAとBの似たような資料がある場合、「Aを発注する司書が○%いて、Bを発注する司書が△%いて、その理由はこれこれで…」といのをじゃんじゃんデータベース化したり、人工知能に学習させていくと、やがては『週刊新刊全点案内』などのデータを放り込むと、「ここの図書館で選ぶと良い資料は1位○○、97%…」というように、自動化できるのではないかなぁと。
もし、そういうことをすると、司書の専門性が改めて問われることになると思いますが、逆に、こういうデータ収集を続けていくとそれこそ「図書館的」とか「ベテラン司書らしい」選書方針が見つかるかもしれませんし、全部の資料が例えば「購入必要率33%」となるかもしれません…そうすると、どれ選んでも同じだろと。笑
しかしながら、『週刊新刊全点案内』の後方にベストランキングとかがありますから、よく図書館で買われる本というのがわかります。
そうすると、やはり、購入すべきか否かの判断がどこかにあるわけで、それを分析し、まとめておけば、ふらっと赴任した図書館職員でも選書がやはりできてしまうことになってしまいますね。

『週刊新刊全点案内』のこの1584号に、1563号のストックブック(在庫している本)の注文冊数の実績一覧が載っているのですが、一冊もその時点で注文されなかったものが5冊ありますけど、他はどこかの図書館が購入しているということになっています。(もちろんその時載っていた全点の一覧でないので、ストックブックでない本でも売れているものや売れていないものがあるんでしょうが…)
ので、データをいくら集めても、「これは購入数が多そうだ」などは傾向が出ますが、本を一冊取り出して「この本は入れるべきか否か」で○×というのは難しそうですね。(いや、理想的には全て○でしょうが)
半年前のデータになってしまいますが、後出しじゃんけんみたいに、今1563号のベスト100でも買えば、素人でも間違いのない選書ができるかもしれません。少しだけExcelなどでデータを加工すると、分野ごとのだってできるでしょうし。

とすると、司書の専門性としての選書の良さを考えると新しく出た資料をいち早く選び抜いて利用者に届けることってことでしょうかねぇ…
「司書不要」と言われないように、日々努力しているつもりですが、出た本全ての中身をゆっくり読んでいる時間もないので、『週刊新刊全点案内』の案内文に迷わされることもしばしばあり、「これ他館ではあまり選ばないかなぁ」と不安になることもあります。
その不安の相談相手を同僚に得ないとすれば、やはりそういう機械的判断も考慮することになるのでしょうか…というジレンマがあったりします。
自館の利用者のリクエストが多い時は「選書間違ったかなぁ」と思ったり、他館からの相互貸借依頼が多ければ「あ~需要はあるのね」と思ったり、選書に絶対の自信を得られるのはいつのことになるのやら。

予算がもうなくて、あと1冊しか購入できないとき、「赤川次郎と西村京太郎の新刊、どっちを買う?」と言われたら、う~む。笑
(知り合いの司書さんは、「図書館の予算で西村京太郎の本を買って、私は赤川次郎の本を自費で買って読み終わったら寄贈する」なんて言っていましたが…ちょっとずる。笑)

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