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図書館とDVDと著作権

図書館で、DVD関係で利用者からある要望が、「(この図書館にない)これこれのDVDをリクエストしたいのですが…」とか「前に買ったDVD、見飽きちゃったので図書館に寄附したいのですが…」とか「どこそこの図書館にあったDVDを取り寄せて欲しいのですが…」など。
これらはほとんど、「う~ん、ちょっと無理」って話。
著作権関連の細かい部分は以前、著作権の話題をしたときにコメントをいただいた、タイゾー様のサイト『ピリ辛著作権相談室』の『Q32:公立図書館から映画DVDを借りたいのですが…(http://urheberrecht.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/q32dvd_c51e.html)』が参考になるかと思われます。
ようは、そこにありますように「著作権の関係から」…いや、正確には「著作権法に書かれている補償金の問題から」といったことが絡んできます。

著作権法上、「第38条 5 映画フィルムその他の視聴覚資料を公衆の利用に供することを目的とする視聴覚教育施設その他の施設(営利を目的として設置されているものを除く。)で政令で定めるものは、公表された映画の著作物を、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により頒布することができる。この場合において、当該頒布を行う者は、当該映画の著作物又は当該映画の著作物において複製されている著作物につき第二十六条に規定する権利を有する者(第二十八条の規定により第二十六条に規定する権利と同一の権利を有する者を含む。)に相当な額の補償金を支払わなければならない。 」ということで、「いくら営利を求めなく無料でも、貸与するんなら相当の補償金を支払ってね」って簡単に書くとそういうもんです。
では、『相当の補償金』っていくらなんでしょう?
現在は、図書館からすると相手の言い値。笑
せめて、定価の○%とか明記していれば、苦労はあまりないんですけどね。(まぁ、定価の300%・400%ってことなんでしょうが。笑)

本来であれば、書かれていないので、補償金額を「利用者に貸したい図書館」と「権利者」で折衝し、取り決めを交わすことによって、双方納得の『相当の補償金』とするのが良いのですが、人員不足で資料費も削られ、いちいち補償金の値引き交渉もやってられないですし、相手方もあちこちの図書館と毎回交渉していたら大変ということで、大抵カタログ販売。笑
つまり、「あ~、館内で見せたいのね?じゃあ、そういう利用ならこのくらいの補償金で」「え、貸出したいの?うちは販売もしているから、補償金はもうちょっと高めに設定しますよ」「上映もしたいって?家庭内で見るんじゃなく?それじゃ、もっと補償金を上乗せしてもらわないと」と言ったか言わないか知りませんが、16ミリフィルムとかもそうですが、大体、「館内利用」「館外貸出」「上映可能」の3パターンで補償金を上乗せした金額(ライブラリー価格)で、複製品(この場合はDVDなど)を販売し、それを図書館が「えー高いよ」と言いながら(?)購入しているんです。
法的にも『相当の補償金』としか書いていないので、「1つの補償金上乗せがされたら、貸そうが上映しようがOK」という世界ではなく、権利者に有利にできる解釈が可能なようです。

ただ、この補償金、どれだけてきとーかというと、出始めは1万6千円で館外貸出OK付を買わされたのに、数ヵ月後、バーゲンセールと称して、5千円くらいで館外貸出OK付が売られたり、「あれ?補償金はいらないの?」と思えるぐらい一般販売価格と変わらない値段で売られたりしていますし。
(ところで、日本図書館協会の映像事業部のページ(http://www.jlaeizo.jp/index_copyright.html)に、『著作権補償処理済ビデオを一般小売価格(一部を除く)で提供します。』とあるのですが、確かに安いと思われるものもありますが、それはこのルートでなくても安いことも多く、どちらかというと『一部を一般小売価格で』の間違いなんじゃ…笑)

ので、図書館で借りられるDVDは一般販売より時々…いや、そのほとんどはうんとお高いということはわかっていただけると思います。
(だから、下手に傷つけられたら困るから、中学生からとかの貸出にしているところも多々あるんですけどね。)

で、最初に戻って。
「DVDのリクエスト」は、正確に書くと受けることはできなくはありません。カタログになければ当事者同士で交渉して『(貸与方法における)相当の補償金』を決めて、図書館がそれを支払えば良いのですし。でも、例え16000円で決まったとしても、「1600円の本なら10冊買えるなぁ」というのが図書館員でしょうから、図書館で「本を10冊あきらめてもこれは買いだな」と思えなければ、先日書いたコミックの収集とかではないですが、『出来なくはないけど、時間的・人員的・予算的な面を考慮して優先順位的に無理』というのが実情。
そうすると、『利用者にリクエストだけを受けて貸出を実現できないのは不本意』ですから、不確定要素が強いので、「著作権法の(補償金支払いの)関係で、リクエストはお受けできません」となるわけです。

同様に、一般販売のDVDも、元々補償金が上乗せされていないものですから、図書館で所蔵するためには、権利者に補償金の支払いが生じるので、「寄贈を受けて、それによって万単位で支払いが生じる」って、図書館的にも困りますよね…
なので、「(そんな余計なお金を図書費を削ってでも支払おうと思わないから)受け取れません」となります。
もし、図書館として絶対に必要だと思われるものでそれに対し何万円も払っても良いと思うものであれば、きっと図書館はありがたく受け取って、権利者と交渉の上、所蔵すると思いますが…市販のだと、同時発売はないにしても、ある程度の期間後ライブラリー価格で販売されるものですからね。

最後の「他館にあるDVD」ですが、これは先に述べた利用条件によって補償金が異なるのに起因しています。
うちの図書館も個別に契約をして補償金を支払っているのではなく、「この条件で、補償金上乗せして、ズバリ○○円!」的なカタログ販売で購入していますから、細かい条件は取引業者と権利者の契約書などに書かれているので、詳しくはわからないのが現状です。
で、以前「上映権付」の『上映』って「利用者が別のところで上映しても良いの?」とか、「図書館主催であれば自治体内施設(例えば図書館から離れて文化センターとか)で上映してもいいの?」とい疑問があったときに、『上映権は図書館のみにあるけど、それも同一敷地内施設(とは言っても、敷地内にたくさん施設があっても、そういう場合はたぶん同一施設なんだろうなぁ)ということになっています。』と回答をいただきました。
ということで、「館外貸出権」というのも「その館の利用者への館外貸出」ということらしく、「相互貸借によって違う館では貸出せない」ようです。
じゃあ、他館からの貸出を一切受けられないかというと…

都道府県立図書館のDVDなら、その都道府県に在住・在勤者が対象ですから、地元図書館になく、そこの県立図書館が館外貸出OKの資料を所蔵していれば借りられるということになっています。
(もちろん、「同一自治体内での中央館と分館の間での相互貸借」は可能です。ので、上記上映も、中央館で所蔵しているDVDを分館で上映は大丈夫です。)
でも…県境の市町村立図書館は広域利用として県をまたいで貸出をしているところも多いですし、在住制限なしの図書館もちらほらありますが、その県在住・在勤者じゃないとその県内の市町村立図書館の利用者であっても借りられないことも正確にはあるんでしょうが、その辺はどうなんでしょう?

個人的には「現品以外に1点複製権付DVD」というのがあればいいなぁ。
おそらくもっと補償金は高くなりますが、本と違って少しの破損で利用できなくなることが多々あるので、原本保存で、その複製物を貸出用に…
それか、1枚ずつの補償金ではなく、「館内貸出可」「館外貸出可」「上映可」の権利を一度買っていれば、もし、破損して、一般販売品を購入しても同じタイトル(作品)であればOKとかにしてもらいたいなぁ。
どうしても、利用者の弁償で補償金上乗せで請求しても、手続きは図書館で代理購入して振込みという形にしなければ、一般の人は購入できないし。
もし、上の方法が可能であれば、「一般販売のでいいから破損させた弁償として買ってきてね」って言えるのですが。
(ただ、上の例のように、同一品が安く買えて、弁償金額が安くなるってことも多々ありますけど。(その時の図書館サイドは同金額なんでしょうか?)笑)

もっとも、『図書館法>著作権法』のような感じで、『著作権に関する規制や制限を緩和できる特別な施設であるかわりに、著作権の啓蒙などがきちんとでき、著作権法をきちんと理解しているる専門性の高い司書を必ず置いて、著作権に絡む問題に対応する』といったことができるようになれば、司書の専門性の向上などになるような気もしますが、無理だろうな。笑

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