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『図書館の自由に関する宣言』って…

 まぁ、たぶん拙ブログを読まれている方々はご存知だろう千葉県東金市立東金図書館の例の件の話。

 もちろん、私も外部の人間ですから、内情はわかりませんが、47NEWSによると『容疑者と被害者情報漏らす 報道機関に東金市立図書館』(http://www.47news.jp/CN/200901/CN2009012401000452.html)ということで、容疑者と被害者の図書館の利用状況を令状もない報道機関の一記者に漏らしたという記事。

記事によると、図書館長は不在で、図書館を所管する市生涯学習課が漏らしたことになっているのですが、検索端末などを部外者がいじることもないでしょうから、図書館の誰かが操作したことになるんでしょうね。

 先に書いておきますが、内山誠一郎館長がちょっと可哀想な気もしないでもないです。記事をそのまま信用すると、当時、館長は不在で、図書館サイドは館長不在を理由に断ったのに、市の生涯学習課の誰かが漏らしたということですから、その誰かの名前は出ないのに、館長だからということで名前が出されるなんてね…

 ただ、図書館サイドで断った理由も「館長不在だから」なんでしょうか?普通だったら「『図書館の自由に関する宣言』を理由に…」だと、市生涯学習課に場所を移すこともなかったような…そう考えると、図書館内の裏切り者は誰?とか、市生涯学習課が漏らしても(どうせ漏れた情報は公になってしまいますが)図書館では漏らさない対応というのはどうかとか、色々疑問点は尽きません。

 もちろん、公務員には守秘義務がありますから、その市生涯学習課の人はそれにも違反しているわけなのですが、どういう処分になるのかなぁと。(処分が公表されることはあるのでしょうか…)

 前置きはこのくらいで、さて、この中で、私はいつも考えさせられる点がいくつかあります。『図書館の自由に関する宣言』を忘失もしくは知らないで市生涯学習課の指示に従ってしまった図書館の内部職員というのも困ったちゃんですが、市生涯学習課で指示を出したのが、上司だったら?と考えると、ちょっと複雑な気分です。

 今回の場合は守秘義務違反もあるので、問題外かもしれませんが、以前書いたように、図書館の運営方針とその上部機関の見解とが異なった場合、公務員には上司の命令に従う義務がありますから、選書で上司からのクレームがあった場合など、指示に従うか図書館の判断に従うか…今回の件でも、例えば課長あたりが、「自分が知っておきたいから」とか「外部には特定できないようにするから」とか言われた場合、上司ですから、「カウンター職員以外は何人にも教えられません」(正論でしょうが)とか、「操作方法は門外不出です」みたいなわけにはいかないでしょう。

 もっとも、異動のある職場なんでしょうから、操作制限のパスワードさえ変えなければ、以前にいた職員でも閲覧はできるかもしれませんから、市生涯学習課の人がこそっと端末操作をして行ったのかもしれないという可能性も0ではないですが…

 今回のとは毛色が違いますが、うちでも利用者に(登録可能ではなかったため)カウンターで登録できない旨を伝えたら、所管課に行ってごね続け、課長が「登録してあげなさい」という指示が出て、腹がたったことがありますので、今回のようなことが起きると1つ目には『上司の指示と図書館の判断の優先順位』について悩みます。

 これについては、この手の話を友人としていたときに、言われたことがちょっと引っかかっています。というのは、『図書館の自由に関する宣言』についてで、イメージ的には「図書館は基本としてこうでなければないらない宣言」といったものなのですが、法的根拠のあるものとしては『図書館法』までなので、上司の命令は地方公務員法で

(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)
第32条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

とありますから、宣言と上司命令では上司命令優先の根拠が上なのかもしれません。(言われたのは「宣言ってこうしますよってことで法的根拠ではないんじゃない?」っていうようなこと。)

 それなら、ほんと図書館戦争の世界のように宣言そのものを法にしていれば、「図書館法に反しますから」と言えるような気がします。
 日本図書館協会自体も複写や閲覧の問題のときには「各館での判断」と言いながら、こういう時だけ「宣言が云々」と出てきて、図書館の総意による団体でも上位機関でもないのに、「あまり信用できない」と言っている人も業界内部にはいますから、「そこで宣言されても…」と一般認識的にはあるのかもしれません。

 次に、今でも「(督促状が届いて親が電話してきて)子どもの借りた何という本が督促なのか?」とか「(予約資料の用意ができたの伝言で)何という本なのか?」とか質問が来ます。もちろん、利用者の秘密を守るということなのですが、「親の監督権」だの「うち家族の中で秘密にするようなことではない」など相手もあの手この手で言わせたいらしいこと多々です。(うちでは言いませんが。)

 その割に、返却時に「他に返却し忘れて残っている資料はありませんか?」という問いには本人か家族かの確認しないまま、「○○という資料が期限切れで残っています」と言うことがあります(一つ弁明すると、この場合家族で1枚のカードを使っていたので)。
 で、ある時、似たようなケースで、離婚関係の本の期限が切れた資料があったので、伝えて、返却しに来た奥さんが表情を変えて「ふ~ん」って言って、逆に焦ったことがあります。

 それはさておき、「家族なら予約資料を言っても良いですよ」と確認が取れていれば伝えますけど、OPACやWebで予約された資料は、そういうコメント付にはなっていないので、やはり伝えられません。そうすると、どこまでを秘密にして欲しいか、登録時点で確認する必要があるでしょうね…つまり、利用事実についてや読書事実について、「家族になら秘密にする必要もない」と考える人がいますが、そういう人がいない前提で書かれてもなぁということ。

 それと、図書館のカウンターはオープンスペースが多いので、カウンター近くの席でずっと見ていると「隣の家の息子がこの雑誌を借りて行った」とか「あの娘はこういう本を借りていった」とか、わかってしまいますし、常連だったら「あの人、いつもこの手の本を借りているなぁ」とか…そうすると、図書館自体は秘密を守ってくれても、見えてしまうものまでは守ってくれないというか、守れません。(その対策としては、透けない図書館袋にできるだけ見られないように詰めてもらって、袋ごとICタグで貸出って方法もなくはないですけどね…)

 もちろん外部にまで教えて良いという人はほとんどいないでしょうから、今回の件は当てはまらないですが、『家族にも秘密にしたい人』と『家族には秘密にしたくない人』をどうするかという点も考えないといけないような気もします。つまり、2つ目は『利用者による秘密の程度の差』をどうするか悩みます。

 秘密にしたいかどうか、それは利用者が決めることであって、貸出履歴の問題もそうですが、図書館システム自体に、そういう柔軟さが足りないような気もします。
 貸出履歴を保持したい人は保持出来れば良いし、外部流出など気になる人は保持しないと出来れば良いし、資料名の連絡も利用者自身が可否を決められるシステムというのが今の時代には良いのかなぁと思います。
 ついでに、貸出履歴みたいなものを自分の簡易書評付で外部に公開したい人もいるかもしれませんし…(ようは本人の知らないところで公開されなければ良いのではないかと。)

 ということで、ここまでニュースになっちゃった千葉県東金市立東金図書館や市生涯学習課の今後の対応も気になるところですが、『図書館の自由に関する宣言』を遵守できない状況にある図書館がある状態はどうよ?

 個人的には記者が『図書館の自由に関する宣言』があるから聞けないと知っておくべきだと思いません(図書館職員だって「知らなかった」もしくは「秘密にあたると思わなかった」ので、市生涯学習課に教えたわけだし。上司命令だったとしても、その情報をどう使うかくらいは確認出来たでしょうし。)。

 知らない場合に、「こういう宣言があって、それを守るので、いくら言われてもお教えできません」と言い切る毅然さが図書館に足りなかったということだけですし、図書館の現場でない人であれば例え上司でも「理解してもらっている」ということはないのですから。(著作権法関連で、現場でないずっと上の上司が「公表されている新聞なのにコピーに著作権法が引っかかるの?」と聞かれたことがありますし。)

 今言えることは、漏れた情報は戻ってこないということですかねぇ…くわばらくわばら。

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