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図書館における重み付け<その3>

<正職員と非正職員>
 まず日経ビジネスオンラインの『千代田図書館の利用者“3倍増”を実現させた「クレド」の秘密』(http://business.nikkeibp.co.jp/article/pba/20090226/187463/)より。

 この中で、例として千代田区立図書館の図書館コンシェルジュに「長年探した本を紹介された古本屋で見つけた話」や「近くの美味しい蕎麦屋を教えてもらう話」が例えに出ていますが、「直営の図書館でやらないの??(もしくはやっちゃだめなの?)」って思いが…

 前者の古本屋の件ですが、利用者は「○○って本を探している」とレファレンスしますよね?図書館では「所蔵がないので他館から取り寄せます」ってなって、利用者が「読みたいんでなくて欲しいんだ」と伝えると、図書館ではネットで検索し、絶版だとわかれば、近所に古本屋があったら問い合わせてみるくらいはするでしょ。

この例では『古書店にあるかもしれないという。』と書いてあったので、事実かどうかは別にしても「なかったら無駄足になるところで止めるか普通?」って思いました。

うちの図書館の周りには古本屋はないのですが、知人の図書館では「利用者弁償になった資料が絶版だったら(図書館として是非現物となると)古本屋にあたっている」って聞きましたから、同じ手法で良いのですし。(自分たちの資料だけに使ってはいけない手法ではないし。)
古本の例はなかったですが、ある熱帯魚が欲しいっていう利用者に、電話帳から何軒かお店に問い合わせして紹介したことはあります。

 後者の蕎麦屋の件ですが、美味しいっていうのは人それぞれですからねぇ…たまに「ここから近い食べ物屋さんは?」ってのは聞かれますから、距離的に近そうな何軒かは紹介したことがありますけどね…

ここで、たぶん問題になるだろう点は、公平性の問題。
「なんでうちの店は紹介しないんじゃ」って、言われたことはないですが、「○○食べ歩きマップ」とか作ると網羅的にお店が載っているので、1店に肩入れしちゃいかんというのもわかります。

でも図書館で『○○県のおいしいお店』とかそういう本があるので、「この本にはこの店が載っています」でも良いでしょう。
同様に、「地域で発信できる情報マップを作成しよう」と図書館が主体となってお店リストだけでなく、その店内の写真やメニューやオススメの一品なんかが写真つきであるもの提供してもらって作成すれば、それを蔵書にすればいいんですし。
まぁ、そういうのは商工会が作っているところもありますけどね。大抵写真が店の写真しかない程度のものだけど。
お店によっては、商工会や自治体からの依頼であれば断らないけど、民間だと掲載を断るケースもありますし。(まぁ、逆もあるかもしれませんが、例を把握していませんので。)

逆の発想をすると、この問題の疑問に納得する人もいるんじゃないかなぁ…
例えば図書館で「恋愛小説を読みたいんだけど、オススメはありますか?」と聞かれ、所蔵している「恋愛小説」を全部並べて「図書館は所蔵資料全てオススメなのでお好きなものをどうぞ」とはしないと思いますし…
また、レファレンスの回答でも「こちらの資料にはこのように、もう一つの資料ではこのように書かれています」と数ある書かれている資料のうち代表するものを数点選んで提供しますし、元々選書って選んでるじゃん。

なので、この場合、店側から判断基準となる情報提供があれば、「煮込みうどんを食べたいという人にはこの店」という判断も可能になってくるんですけどね。
(最終手段としては公的なオススメがまずいとすると、よく聞く『私人として』すればいいんじゃないかと。「私は○○ってお店に食べに行っています」みたいな…笑)
食べ物に関しては、先に述べたように美味しい観点が違うことが常ですから、何軒かピックアップするレファレンス回答方式でないと、「図書館で聞いたけどまずかった」と言われちゃいますので、それがベターかな…と。

今日の話題から少し離れたところから始まり、そのまま飛んで行きそうになりましたが、公務員正職員だから民間指定管理者だからってやれることの差異は少ないような気がします。
もちろん、やれるからやるか否かとなると、民間有利とはなりますが。笑
(公務員だとなかなか上の理解を得るのが難しい。上主導なら力も入った企画になるんですけどね。笑)

ということで、指定管理者云々でなくても正職員と非正職員についての話をしたいと思います。

私は現在、このような小さな田舎町では絶滅危惧種のような司書採用の公務員正職員なのですが、「じゃあどれだけのことをしているか?」となると、変に期待されても困りますから先に言いますが、大したことはしていないと思います。(近くに比較対象もいないですし。)
例えば、『Webでこういう情報発信に力を入れています』とか『こんな実績があります』とか『こんな論文書きました』とか言えることがあれば良いのでしょうが、ないですねぇ…考え方はこんなですが、ごく普通なんじゃないかと思っています。
色々やりたいことの思いつきはあるのですが、言い出すと私1人に任せ切りになるような環境で、自分に鞭打つわけにも生きませんし…なので、どうみてもオーバーワークな感じでもこなしている方を見ると、ほんとすごいなぁと。

うちの館は私も含めた公務員とパートの混合の職員なのですが、全国の図書館でどのくらい全員正職員という館があるでしょうか…(いや、調べれば良いんですけどね。笑)
以前も書きましたが、2008/10/8発信のJLAメールマガジンの第424号によると『○図書館の非常勤・臨時職員は61.6% 自治労調査』ということで、5人いれば3人は非正職員状態ってことですよね…

おそらく、統計的にも非正職員率が増大している業界であるのは確かです。
でも、図書館業界的には、正職員の方が『継続的で安定したサービス』とか『ノウハウの蓄積される』とか『長期的展望に立った展開が可能』とか言われいて、正職員というのに重きが置かれ、逆に本庁の人事担当などでは、「財政難だから正職員減ね、足りない分はパートでまかなって」とか「指定管理者制度の導入ってどう?」と導入ありきで話が振られたりしますし、「色々な課を経験するのが大切だ」と異動希望もないのに定期異動があるところもありますので、図書館外では非正職員にシフトしてるような感じです。

ただ、司書採用で採用されなければ、(まぁされたとしても)通常異動する職場なら5年のうちには異動させられますし、それだと指定管理者の3年とそんなに変わらない気もします。
確かに中には図書館勤続20年のベテラン図書館職員(司書だと限らない)がいたりする図書館もありますね。その割合の統計ってどこかにあったような気もしますが…はて?

さてさて、うちは正職員とパートの混成部隊なのですが、実はパートで司書資格を持っている人、1人もいないんです。(本当は資格があってほしいですが、安い時給でだと自治体内限定だから)
だからといって、図書館で正職員と非正職員の業務が明確にわかれているかと問われると微妙な面もありますが、運営上は問題なく、いや、問題はあってもないようにカモフラージュして、運営されています。

私は、当初は明確に分かれた方が良いかな?とも思いましたが、利用者にとって、フロアにいる正職員もパートも同じ図書館職員に見えますし、もし質問して「私パートなのでわかりません」という答えが返ってくると2度手間になってしまいます。
なので、最初の研修のうちに、簡単なレファレンスを答えられるまでのテクニックや、『えをかく』という本の読みの検索では「エ オ カク」だの、目録規則の話や分類記号の考え方など、必要な事項を研修したり日々の業務の中で指導しています。

それ故、長く勤めてくれると研修のやりがいがあるのですが、辞められるとまた次の人にせっせと覚えこませるということをするので、なかなか大変です。
マニュアルを見て全てが理解できるものではないですからねぇ…
おそらく、司書資格取ったばかりの人や資格だけ持っている人よりは、うちのパートは即戦力になるとは思いますけどね。
(実際のレファレンスでは簡単な部分はパートも含めてやり、やっている中で質問を共有して、難しい部分や補足が必要な部分を私が同時に調べるという感じです。ちなみに、うちのパートがやっていないことは選書や会計処理などのバックヤード業務にはほとんど携わっていませんが、修理とか雑誌の登録作業などのバックヤード業務はお願いしています。)

何も、うちの館のパートをよいしょしているわけではありませんが、何を言いたかったかというと、大学の授業での演習なども含め、実際に図書館業務で活用できる授業はあまり多くないということと、少なくても1人図書館に精通した司書がいれば、その知識などを研修や日々の指導によって業務は可能ということです。
また、以前から「図書館に勤めるのに司書資格って必須じゃないというのは変だよね」という話も聞きます。
それは私もそう思います。
例えば車の運転などは小学生でも可能です。でも、法的に免許がないと運転してはいけません。教員免許がなくても勉強を教えられる人もいますし…
じゃあ、免許じゃなく資格だからといって、司書資格を持っていないとできないこと…何があるでしょう?
全ての資格がそうだと思いますが、持っていなくても教えればわかります。

それと、私が教員だった頃に言われたのですが、「1年生教員だろうとベテラン教員だろうと生徒にとっては教員は教員だ。」と。
これは図書館司書にも言えます。
新館オープンでノウハウも少なく、経験の浅い人ばかりだからといって、込み入ったレファレンスは受け付けないということもなく(まぁ、回答内容に差がでますけど)、利用者にとっては他の図書館と同じように利用してきます。
じゃあ、この回答の差を何で埋めるかというと、他館のベテラン司書などのノウハウや県立等から派遣された職員などに聞くってこともあるでしょうし、情熱で乗り切るってこともあるんじゃないかと。(例えばレファレンスで総当り的にチェックするとか…)

このノウハウというもの、「うちのベテラン司書ならわかると思うのですけど…」と個人の経験的ノウハウでしかないことが多いです。確かに、そういう人に聞けば解決することも多いですが、聞ける人がいなかったら?情熱が燃え尽きたら?

私も困る点はここです。
できるだけ、「私ならできるが、他の人が同じように継続できるか」とか「万一急にいなくなった(事故や死亡などで)時、どうするか」を考えながらやっていますが、私一人で抱え込んでいることも多くそう考えると、仕事を分担しておかないと困るということがあり得ます。
例えばWebの更新方法などは手順書があるからなんとかなるでしょうが、エクセルのマクロなどは他の人がいじる仕様になっていないし、選書やレファレンスに使っているツールだって、全てが共有されているとは言えず、伝えられていません。
他にも、経験的なものや感覚的なものなど、私も御多分にもれず、ノウハウを自分に蓄積している点も多く、それは何かあったときに問題なのかと思います。

そうすると、以前から書いていますように、『ノウハウをどこに溜めるか?』という問いに『図書館に』となるかと思います。
正職員・非正職員に限らず、図書館にそのノウハウを溜めることが出来るようになれば、やれ指定管理者だの、やれ正職員がいないだのあっても、長期的な図書館運営やサービスが可能なんじゃないかと。
まぁ、問題点は、溜められたノウハウに依存しすぎて発展性に欠けることもあり得るというとこでしょうか。
可能であれば、そのノウハウを門外不出とせずに、公開されればベテラン司書のいない図書館でもそれ同等のサービス展開などができるようになるんじゃないかと。

図書館職員の非正職員化は、職員の生活環境なども考慮すると止められるものであれば止めたい気もしますが、日図協などが「あ~だ、こ~だ」コメントを出したところで、図書館法が改定され「図書館は司書有資格者の正職員で運営されなくてはいけない」などの条文が入っていないところをみると、誰にも止められないんじゃないかと思います。誰に期待すれば良いのでしょう?(他人に期待するなって?)

だからといって、このまま進むとベテラン司書のノウハウは散逸してしまいますし、何よりも図書館の仕事自体が安定した職業としてなおのこと見られない状況になっていき、サービスが全体的に低下していくのは避けたいものです。

それなら、まずは図書館にその持てるノウハウを蓄積し、それを公開することによって「これだけやるのは正職員じゃないとな」と判断されるのもよし、「確かに1人だったら正職員だろうが複数人の非正職員にすれば可能だな」と思われるのも仕方ないかと。
その仕方ない中、どこでもレベルの高いサービスができるようになれば、業界も向上すると思うのですが…
もちろん『言うは易し行なうは難し』なのですがね。

今日のまとめ。
・直営だから民間だからといって、やれる事にはそんなに差はない。(実行に差はあるかもしれないが)
・司書資格なしでも、指導がしっかりしていれば、有資格者より有能になることもある。
・図書館は正職員重視、行政は人件費重視だが、ノウハウを溜める仕組みがちゃんとしていれば、長期展望に基づいた運営も可能。
・ノウハウは個人に溜めず図書館に溜めていき、できれば公開した方が良いのじゃないか。
・日図協などはこの非正職員化に歯止めをかけられるんだろうか…

この重み付け考の<その1><その2><その3>が元は1つだったと思うと…笑

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