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図書館における重み付け<その2>

<常連と未利用者>
 前振りで、1年ぶりくらいに、先月初めに再び話題にのぼった『みんなの図書館2008年2月号』の田中敦司氏(名古屋市緑図書館)の記事より『日常的によく利用する利用者、いわゆる常連のかたと、今日カードを作って初めて利用する利用者の間に、対応の差があってはならない。してはいけないことである。』って話からスタート。

 この論文、平等性の履き違えだなぁとスルーしていたので、あまり記憶になかったのですが、改めて読み直し。

 『購入した本が図書館に入ってきたときに、想定していた常連のかたに「こんな本が入りましたよ」とは言えないことである。』
 う~ん、どうだろ?そもそも常連だから、チェック済みのような気もしますし、新着本をOPAC端末で見たりしないといけないならば、初利用者だとわからないでしょうが、言える言えないというより、新着本を入り口近くの目立つところに置いて、『新しく入った本リスト』をぶら下げて(または配布用を作って)おけば、目を通すでしょ。
 うちの常連は、真っ先にリスト見ていきますよ。初めて来た利用者だって見ていくことがありますから、そんな工夫だけで無駄なことを悩む必要もないと思うんですけどねぇ…
 これで、「次の火曜日に入る本はこれこれで…」とその常連だけに教えるとか、通常は予約できない資料を予約してあげたり、他に貸し出さない資料をその人にだけ貸すとか、予約順位を繰り上げてあげるとかなんかすると、それはもう贔屓であると思いますが…(もちろん、これから入る本リストを作っている図書館もありますけどね。)
 初めてだろうと常連だろうと誰でも見える状態で新着本リストがあれば、この場合問題ないでしょ。

 この論文では、憲法第14条や地方公務員法第13条を引き合いに出しているのですが、それなら常連云々言う前に、その理論で行くと、(名古屋市立図書館は愛知県内在住・在勤・在学なら貸出可なんだけど)全国誰でも貸出してくれないと、県境を越えたから借りられないんじゃだめなのでは??
挙げた例や話の展開が悪かったんじゃないかと…(私も展開が上手ではないのであまり言えませんが)

 私が同じような文を書くとしたら、この部分『初めての利用者にもわかりやすい掲示や案内を心がけよう』で済んでしまいます。対応の差が気になるのなら、『言わない』で低い方に合わせるのではなく、『みんなにわかりやすく伝える』と高い方にすればいいだけの話。
もちろん、この論文で「この本を買えば、あの人とあの人は借りていくだろう」と想像しながらの選書についても触れていますが、たまたま想像できただけで、何も『一切誰からも手に取られないような資料を選ぼう』って選ぶわけがないですから、今後常連になるかもしれない初めての利用者が「あ、この本」って手に取ることだってあると思って、時には10年後の誰かが利用するだろうと思って選書していることも多いはずです。

 何も「常連の○○さんはこの作家が好きだからその作家の本は全て揃えよう」ってわけではないのでしょうから。(それはそれで、偏ってはいますが、「この図書館には××って作家の本が全て揃っている」って逆に特色になりますけどね。)

 この論文、「近所の人がカウンターという事態をまず避けていくことが重要である」というのと(図書館の自由に関する宣言があまねく住民に知られるようになった)「その暁には自分の親友がカウンターにいたとしても、安心して借りる本を差し出してくれるであろう。」って文があるのですが、「自由に関する宣言が知れ渡っていないので、近所の人がカウンターにいるのは危険」と取れるのですが、知られなくても宣言はあるんだから、「安心して借りに来てください」で良いような…

 確かに、最近は近所の人でないとしても、「この人、こんな病気なの?」と思われるのではないかと思って恥ずかしいなどの理由で、対面式の貸出が嫌がられる傾向も見受けられますし、自動貸出機を導入した館の記事の中にもそのような話があったかと思います。もちろん、気にしない人もいますから、気にする人用の自動貸出機導入っていうのはありだと思います。これが近所のおしゃべりで有名なおばちゃんだったら、なおのこと借りるのを躊躇しそうです。そのおばちゃんを採用する側にも多少の問題はありそうですが、そのおばちゃんが宣言を遵守してくれれば、問題はないわけですし。

 ただ、近所の人を避けることは都会ならともかく、地方だと難しいのじゃないかな?
図書館が広域になればなるほど、その図書館にいる職員・パートはその外にいなければいけなくなるわけですし(いずれ近所もしくは知っている人が来館するかもしれませんし)…そうすると、利用登録は全国可の図書館の職員は海外移住しないと…笑(ところで、田中氏は名古屋市立図書館に当時勤めていらっしゃったようですが、愛知県外在住なんでしょうか…)

 それとも逆に、その職員・パートを図書館以外の場所で知っている人は利用不可の図書館にするとか…笑

 まぁ、そうはいきませんから、採用条件に口が堅い人とかあってもしょうがないし、宣言の徹底を図る方が合理的ですし、その地域にいなければ、それこそ細やかな地域密着サービスなんかできやしませんし。
 あまねく住民に宣言を知ってもらう必要はないと思いますが、必要であれば利用案内や入り口の目立つところに明記しておけば良いのだし、普通の公務員だって守秘義務が守られていない時も見られるのですから、守秘の徹底以上のことは言えません。
 以前に書いた全自動図書館とか無人図書館を作るなら別としても、この論調はいただけないと思う。
 せめて、上にも述べたけど、「守秘云々以前に、病気や現状のプライバシーに関わりのあることを他人に知られたくない人も最近は多くいるので、1台ぐらいは自動貸出機を」って感じなら賛成かも。

 それと貸出履歴の保存機能について「いつか使うかもしれないからといって残しておくよりは、流出のリスクを考慮して残さないほうがより安全なのではないか。いや、残すべきものではないと言える。」「残さないような選択肢があるならば、そちらを選択してほしいと願っている。」と書いているのですが、カウンターにいて「前に私が借りた本わかりませんか?」って利用者に聞かれたことがないのでしょうか?

 確かに流出のリスク云々は私もコンピュータ好きですからわかりますが、じゃあいっそ、利用登録とかもやめて、資料を貸さなきゃリスクは激減ですよ?閲覧だけなら全て公平で平等ですよ?

 もちろん、私もアマゾンの「こんな商品も~」はいりませんが、それが新たな発見となって「あ~こっちも欲しいや」って思う人だっているでしょう。論文調だから、ちょっとカチンとくるのだと思いますが、利用者の要求は十人十色なんですし、現に貸出履歴を残して欲しいとかいう人もいるのですから、そういう人のためにも私なら「残せる機能があるのであれば、それを不快に思う人もいると思うので利用者ごとに設定できるようにして欲しい」としますけどね。

 さて、私も、公平性とか平等性について考えたことがあるのですが、本題に入る前に思うところを一つ。
 この田中氏の論文では商店の「お得意様セール」の手法が図書館に使えない旨が書かれているのですが、どうしてだろう?と。
 確かに、この『お得意様セール』、入り口で案内状をチェックされ、案内状を持っていなければ入れない形のであれば、図書館が開館しているのに常連しか入れないというのは少し問題でしょう。
 が、これが優遇や優越感を満たすセールということでは、レジで数パーセント値引きされたり、粗品をもらえたりというのも含まれるかと思います。
 それで、これは不公平で、不平等なことなのかと考えると、ある一定以上の貢献があれば誰でも享受できると明確な決まりがあって、それが守られている時には、一概に不公平と言えないんじゃないかと…

 個人的には、ノーマルカード・シルバーカード・ゴールドカード・プラチナカードみたいに、最低限の図書館でやることは保障されていて、その上で、図書館の利用度や利用状況によってプラスアルファを得られる図書館ってあっても面白いかもしれません。(この条件やプラスアルファを考えるのが一番頭が痛いですけど)
 mixiみたいに、限定者しかできなかったことを徐々にノーマルに移していくというのも必要ですが。(できるだけ全員に高いサービスをしてあげたいし)

延滞のペナルティの逆の発想とすれば、難しくはないかと…

 なので、公平なスタートラインで、公平な条件の下、条件を満たせば自動的にランクアップというのは公平?不公平??
(公平の最低限(全員が享受できるレベル)をどこに定めるかも悩むところですし、どんなメリットにしても「どうしてあの人は」という疑問が利用者から出てくるので難しい問題だとは思いますが、うまい条件やプラスアルファが設定されると、プラチナカード目指して利用促進してくれるかなぁという目論みもありなんですけど。条件としては期限切れを一度も起こさないとかも入れたいねぇ…笑)

 まぁ、パウチカードから名前の刻印入りのピカピカ・キラキラなオシャレなカードになるだけでも「いいなぁ」と思う人には良いのですけど。(我ながら子供っぽい発想かも。笑)

 それはさておき、図書館では、常連やヘビーユーザーだろうと初利用者だろうと、貸出数や貸出期間に差はありませんし、常連じゃないからといってレファレンスに手を抜いたりはしません。
 もちろん、常連さんだと新刊が入る曜日や雑誌の最新号が並べられる時間までわかっていますし、職員に「あの(シリーズの)続きってもう入荷した?」って尋ねるだけで、話が通じることもあるでしょうから、そこには長く図書館に通っている経験の差というものが出来てしまいます。

 それに、本当は誰でもリクエストして購入や他館依頼してもらって、資料を取り寄せたりすることができるのですが、「お手を煩わせるの悪いから」など言って遠慮するのも利用回数の少ない方が多いような気がします。常連さんだと「悪いけど、またこれ(リクエスト)お願い」とか「さっき見たら○○図書館が貸出中じゃなかったからお願い」とか自然にサービスを享受しているんですけどね。
 そんなことはあっても、来館者には同等のサービスが知られているか知られていないかは別にして保証されていますが、非来館者だと色々な都合によりサービスは少ないことになっている図書館も多いと思います。

 確かに、中には来館できない人のために健常者でも郵送貸出をおこなったり、メールレファレンスもやっている図書館もありますし、先に挙げたように新刊情報をWebで公開したり、各種情報が充実している図書館もあります。
 でも、(最新号の雑誌や新聞、貸出禁止資料などの)ブラウジングは実際に来館しないとできませんし、拡大読書機の貸出とかもほとんど聞かないですし、朗読(音訳)サービスも来館してというのが多いのではないでしょうか。
 お話会やブックトークなんかは、ある程度団体であれば職員の出張講座みたいにやっているところも多いのですけどね。
 今のところ、鎖に繋がれた資料を図書館で見ることから、徐々に郵送貸出などで、来館しなくても受けられるサービスが増えて来ています。非来館者へのウェイトがシフトしているのでしょうかねぇ。

 将来的には、セキュリティーのかかった電子データによる貸出なども可能になり、非来館型の図書館利用という形になるかもしれませんが、「や~今日は10人も来館したよ~」ってちょっと今からすると寂しい感じですね。笑

 郵送貸出の話が出たので、ちょっと話を中断して一言。
「無料の原則で貸出は無料なんだから、郵送費取るのはどうかな?」と以前言われたのですが、私は往復利用者の実費で構わないと思いますよ。
だって、「図書館にバスで資料を借りに来たからバス代よこせ」っていう人いないでしょ?同様に「貸出利用者にガソリン代を支払います」っていう話もないですし(逆にそれをサービスにしたら利用増えるかなぁ?)、「図書館を2時間利用したのに1時間以上は駐車料金を取るなんて」ってもめることも(実際はあるのでしょうが)ほとんどないと思います。
もちろん、これで『貸出手数料』で郵送料にプラスして料金請求は(保険分は仕方ないかもしれませんが)できないのでしょうが、郵送料を取るのは問題がないと思いますけどね…

 話を戻して、全ての人に結果として公平なサービスというのは、相手の経験や状態、環境によって違いがあるのでできません。
 インターネット上で情報を発信してもインターネットに接することができない人には意味もないですし、来館できない方であれば図書館サービスを知る機会も少ないかもしれません。
 そういう人達が、全て同じ情報を得られ、同じサービスを受けられるというのは理想ですが、難しいのが現実です。
 その場合、直接伝えられなくても人を介してなら伝わることも多いですよね。
 友人、親、家族、先生、介護者、店員、お客…色々な所から伝われば、来館者も増えるでしょうし、来館できない方でも、利用したい意志表示があれば図書館は何らかの手立てを考えてくれる(例え「代理人が来館すればいい」というものだったとしても)はずなので、気軽に問い合わせてほしいものです。

 そういう感じに自然と常連さん達が未利用者の人を呼び起こし、新たな常連さんを作るようなきっかけになると、良い図書館ができるような気がします。

で、ふと思った脱線話題。
みなさんの自治体職員の図書館利用の状況はどうなんでしょうか?首長や議員さん達なんかの利用状況を知りたいなぁ…(首長が常連って図書館はある意味微妙ですけど。笑)というのも、住民に対応する窓口で「それなら図書館ででも調べられますよ」とか「詳しい資料は図書館にあるはずです」とかだって可能でしょうから。
まぁ、それには図書館自体が「図書館ってこの程度だ」と思われないサービスをやっているのが前提ですけどね。

 さてさて、『常連と未利用者』とタイトルがあるのにさっぱり未利用者について言及がなかったので、ようやく。
 図書館は、上で述べましたように、常連というか来館者に重きを置いたサービス展開が今のところ多いです。
 これは、貸出数の統計や入館者数の統計で「増えた」「減った」言っていることが多いからだと思われ、逆に近年では「受身的図書館から情報発信型図書館だ!」とWeb展開をしている図書館も増えてきました。
 もちろん、図書館のWeb上で用事が済めば図書館に来館する必要もなくなります。そうすると、長年取っている入館者数統計上は減ります。
 担当としては「Webアクセス数が飛躍的に…」と説明してもなかなか納得してもらえるものではありません。

 なので、未利用者に図書館に来てもらう対策を練らないといけないのですが、「フランス料理を食べたい人に中華料理を勧めても無駄」という考えも無きにしも非ず。
 どんなに情報発信して、図書館をPRしても関心のない人にはそれを受けることなくスルーしてしまう以前にその発信情報にアクセスすらしない状況なのですから。「上を見なければ頭上に星が輝いていることに気付かないし、その人にとっては星はないに等しい」といったところでしょうか。

 なので、未利用者はほとんど図書館サービスを享受することもなく、ともすれば享受しようとも思わないままでいることもあるでしょう。

 ただ、その一方、伝わっていないから未利用者ということもあり得ます。だって全体の3割しか利用していないのだから。
 その人達も、あることを知らないから発信された情報にアクセスしません。
 なので、せめてアクセスした時には、わかりやすくアピールする情報がある必要があります。
 アクセスしたいと思うときに例えば常連さんのような利用者が「それは図書館に行けば良いよ」というアドバイスがあれば、図書館としては願ったり叶ったりでしょう。
そのために、常連に限らず、手厚いサービスをするのが望ましいでしょうが、図書館の現状を考えていくと、人手なども足りないかと思われます。
 それなら、常連を手始めに試行して徐々に裾野を広げる方法もありなんじゃないかと…
 常連に手厚いサービスをすると冒頭の田中氏のように公平性に欠けるって考える人もいるのでしょうが、条件を一定にしておいて、利用者全てが常連になるような心持ちでいれば、「あそこは良い図書館だから通い詰めちゃうよな」って図書館にだってなれるはず。
もちろん、言葉で言うのは簡単だけど、簡単に実行できるものなら、どの図書館だってやっていますよね。笑

 以前の来館者限定みたいなサービスから徐々に来館できない人や未利用者へのサービスが広がりつつあるのは、ウェイトがシフトしているからだと思いますが、1つ懸念が。
 来館者も非来館者も常連も未利用者もWebの情報発信ならば公平に情報を得る機会に恵まれるかもしれませんが、携帯電話を持っていない人が一定数いるのと同様、インターネットをできない人だって多数います。

 全ての人に同じように情報をというのはもちろん理想ですが、Webに重きを置くのも「Webで公開しているから安心」となっては、問題なのでしょうね。(Webに情報を発信すること自体は良いことと思いますけどね。それだけで安心しちゃうのが問題。)

 情報満載の図書館便りの回覧とかもその対応としてはあるのでしょうが、一度に見切れないほどの情報量になっちゃうかもしれません。
 それに、ポスター掲示と一緒で、必要となるときにならなければ、情報はスルーされますし…
 実際、何かある場合、自分の周囲の人や友人知人にに聞いてみて、解決すれば儲けものって感じなことが多いでしょうから、図書館は住民の良き友人である方が良いのではないでしょうか。
 図書館の電話番号が住民に覚えやすいものであるというのも良いかもしれませんね。「何かお困りの時は○○番!」と。

 最後に、そういや、アマゾンが電子書籍端末「Kindle(キンドル)2」を発表し、iphoneでもアプリケーションを介して読めるようになるという記事が発表されたのですが、おそらく、その先の戦略的には他の携帯端末やゲーム端末なども視野にはあるんじゃないかと。(キンドル2が売れなくても電子書籍が売れればなんとかなりそうだし)

 そうなると、図書館としては電子書籍をどうやって貸出するかとか、そういう議論も深まってくるとは思うのですが、もしそうなってくると、図書館のサイトにアクセスして電子書籍をダウンロードして閲覧し、期限が来たら端末から電子書籍情報が消えるって感じで、図書と図書館が身近になったけど、図書館そのものには来館することもなくなる時代が来るんでしょうかねぇ…
 今は「滞在型図書館」だの「非滞在型図書館」だの言われていますが、将来は「来館型図書館」と「非来館型図書館」なんてことになるんでしょうね。
 まぁ、図書館が空気みたいになきゃ困るけど普段はあることを忘れているくらい身近な存在になってもらいたいものです。

まとめ。
・図書館は常連だからといって優遇しているわけでない。常連は経験により図書館サービスを最大限に利用しているだけ。
・明確な条件の下、サービスに何かしらのプラスアルファがあっても良いのではないだろうか。
・来館者中心のサービスから非来館者へのサービスも徐々に拡大している。将来的には非来館型の図書館というのも出てくるのではないか。
・潜在的利用者を未利用者の中から選び出すのは情報発信より人の繋がりなんじゃないだろうか…

…まとめると短いね。笑

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