« 都道府県立図書館の行方 | トップページ | 低きに流れる?? »

予約とリクエスト…ようはすぐに手に入らない資料のこと。

 G.C.W.さんの愚智提衡而立治之至也というブログの『予約』というエントリー(http://jurosodoh.cocolog-nifty.com/memorandum/2009/04/post-9534.html)を読ませていただいて、いくつか思ったことを書こうと思って、その前に用語の整理なぞ。

 『予約』と一言で言っても、図書館によっては、『リクエスト』という言葉であったり、ごちゃまぜだったりするので、ようは『現在書架にない資料を用意してもらう』のを『予約』とすると、整理して考えないときっと議論のどこかで平行線になるだろうなぁと。
1.所蔵資料が貸出中のため、返却後すぐ読めるようにする『所蔵資料予約』
2.未所蔵資料で、図書館で用意できたらすぐ読めるようにする『リクエスト予約』
2-1.そのうち発売前の新刊・発売後の既刊で購入するもの『発注待ち予約』
2-2.そのうち発売後の既刊で相互貸借するもの『借受待ち予約』
で、それ以外は『図書館都合キャンセル』。笑
館によって違うかもしれないけど、今回はこんな風に用語統一をさせていただきます。

 おそらく数値的には全て予約数になるのですが、レファレンス件数が難しい事項調査もクイックレファレンスも道案内すらレファレンス件数になるかもしれないのと同様、中身を精査して考えないといけないのだろうと思います。

 1のパターンでは、資料に満遍なくある程度の予約が付くのであれば、それはほどよく図書館が利用され、ニーズにあった資料が置いていることであると思われるので、悪いことではないと思います。それはG.C.W.さんが『図書館に期待している「利用者」が多いのだよな,という感じ』とおっしゃるように、そうだと思います。
でも、その一方で、ベストセラー本に大量の予約というのは良くも悪くも物議をよんでいますね。

 その図書館の利用者サイドからすると、「数百番目っていつ読めるんじゃい」ということもあるし、一時のブームが去ったときのこと(書庫にずらーっと並ぶ)を考え「複本大量購入するもなぁ…限られた予算で多様な資料を提供してあげたいし(複本の大量購入するということはその分、他の資料が買えないので)」と躊躇する図書館もたくさんありますし、大量購入したらしたでマスコミに「無料の貸本屋だ」とつつかれ、出版社や作家などにも「そんなことするから本が売れない」とつつかれ…

 だからといって、その図書館の利用者が「それでも私たちのニーズを満たしてくれた良い図書館なんだ」という賛成意見は見事に掻き消され、最悪、予約順位がかなり後なことに文句を言っている割に「そんなに複本を買うなんて…」と言う利用者もいますし。
 いっそ、極端にベストセラー中心の複本大量購入で参考資料が一切ないような図書館を作ってみれば、すごくよく比較できるんでしょうけどねぇ…
 あれ?でも、複本大量購入しちゃうと、予約が減っちゃいますね。笑

 今日はあくまで『予約』についてですから、ベストセラー複本大量購入云々については、ここ以外で昔から議論されているでしょうから、ここではこのくらいで軌道修正しましょう。
1のパターンで、予約数が増えるということは、(ベストセラー複本を購入しようがしまいが)その図書館が利用者に一応なんらかの期待されている『かもしれない』指標にはなるんじゃないかと思います。

 で、2のパターンではどうかと考えると、『発注待ち予約』であれば、購入後、1名は少なくても利用がある保証があります。それ以上はどうかわかりませんが、リクエストで購入した資料は案外利用されているという論文(?)をどこかで見た気がしますので、それを丸まま信じようとは思いませんが、経験則からすると、他0ということもたまにありますが、確かに借りられることはあると思いますので、悪くないかと。

 他方、『借受待ち予約』で、本来の相互貸借の原則としては「その図書館で購入努力をして」という大原則があって「購入でいない場合に所蔵している図書館に依頼する」なんですが、どうもなし崩し的に「他の図書館が持っているようだから借りよう」になりつつある感じもします。
 それはそれで、「県内に1冊で良いのか?」その辺の議論にもなりましょうが、話し出すとたぶん私も止まらないので再びスルー…

 新刊はまだ発売も購入もしていないのだからともかく、既刊資料に付いては、予約がどんどん増えるというのは、『必要な資料がない』というのが目に見えるという点で、その時点では『悪い図書館』なのかもしれません。(もちろん、新館で、古い本が少ない場合はそれは話が違いますよ。)
 「こんなに予約が入っているんです。だからもっと予算を!」で、すんなり予算がもらえるのなら、おそらく資料費について予算が足りないという問題は出てこないでしょう。
 逆に、「ニーズに合った選書していないんじゃないの?職務怠慢なんじゃ?」とか「他から借りられるんでしょ?財政難なんだから。」って言われるのがオチで、良くなる気配はないのですが…
 利用者だって、いつも借りるまで待たされるんじゃ、利用も減るでしょうしね。

 ということで、2-2のパターンの予約が増えるということは、「新館だから」とか明確な理由がない限り、『そもそも購入しようとも思ってなかった、またはあったけど古いので除籍しちゃった』というどちらかというと先見の明がなかった図書館なんじゃないかと…
(というより、他人の褌で相撲をとるようなものなのかもしれません。確かに財政難なのは百も承知ですが。)

 もちろん、『リクエスト予約』があって、既刊でも購入して対応するのであれば、良いでしょうし、絶版なので仕方なく相互貸借というのもあるのでしょうが、「じゃあ、どうしてその時買っておかなかった?」と、先見の明がなかったことを反省する材料にはなりますね。

 で、そうなると『所蔵資料予約』が少ない場合は、スムーズに蔵書が回転しているか、必要とされていないか。
 『リクエスト予約』のうち『発注待ち予約』が少なければ、「きっと買ってくれるだろう」と期待されているか、利用者に新刊への興味が少ないか。
 『借受待ち予約』が少なければ、所蔵資料に満足しているか、手数をかけると思い利用者が恐縮しているか。

という判断になりますが、そもそもそういう予約やリクエストが周知されていないというのも確かにありますけど、数値だけでは『スムーズに蔵書が回転』し、『新刊も期待通りに購入』され、『蔵書も満足』できる図書館なのか、それと真逆な図書館なのか一概には言えません。

 とどのつまりは、利用者ニーズをちゃんと満たすと、自ずと予約数は減ってしまいます。

 G.C.W.さんの『極端な話,蔵書が1冊しかない図書館なら予約率は幾らでも上げられる』ではないですが、「住民ニーズと全く合わない資料を収集すれば、予約数は(期待されているうちは)激増する」わけでして、そんな図書館をそのアツイ人達が目指しているとは少なくても思わないですし。
 まぁ、逆にそういう図書館が県内にあってくれると、通常所蔵がない資料がバンバン所蔵しているでしょうから、全県的に見ると(あっても)良い図書館になるかもしれませんけどね。笑

 ただ、予約やリクエストの業務などが周知されている(もしくは周知できている)と思う図書館であれば、予約数が多いことより少ないことに意義があるんじゃないかなぁ。
 そういう意味では、G.C.W.さんの予約増加はあまり好ましくないという意見に賛成。もちろん、予約数を過大評価すべきでないことはもっと賛成。

 まぁ、周知されていない図書館だったら、周知するようにして、予約数UPに向かっても良いのでしょうが、おそらくそういう図書館なんだから、ある程度周知できたら『予約数が増える=反省しなければいけない点が多い』ことも頭に入れてより良い図書館にするようにしてほしいなぁと。

 ということで、貸出至上主義というのは今もある感はありますが、予約数が増えれば増えるだけ良いと考えている人って今もいるのでしょうか?ベストセラー複本の大量購入は是非はともかく、利用者を待たせていることには代わりないのですし…
 そういうことを考えると、以前少し触れた図書館レベルと地域レベルで話は違うんじゃないか、それなら話は平行線になるし…と思いました。
 どれがどういうレベルというのは、独断と偏見に満ち、語弊が多々あると思うので、そこはご了承願って、大雑把ですが、例えばこんな感じ。

レベル0:図書館は未設置・地域の要望なし
・世の中に『図書館』というものがあるらしいが、あまり必要ないと思うレベル

レベル1:図書館は未設置・地域の要望あり
・行政側がその声を無視も出来ないが財政難に頭を悩ますレベル。
・「ひとまず自分の自治体にも『図書館』というものが欲しいなぁ」と思うレベル。

レベル2:創成期型図書館・地域需要少
・せっかく図書館があるのだから、貸出数を増やしてアピールするレベル。
・「『図書館』で本が読めるぞ!でも、あまり本って読まないし」と思うレベル。

レベル3:創成期型図書館・地域需要中
・そこそこ図書館も認知され、イベント連発で人を図書館に呼んで、使ってもらうレベル。
・本を借りることがメインだが、他のサービスも機会がある人だけに利用されるレベル。
・「貸出以外にもそんなサービスもあるんだぁ」って思うレベル。

レベル4:発展期型図書館・地域需要多様化
・地域住民の需要に応えるべく各種サービスも拡大していくレベル。
・運営上の問題がちらほら出てきているがサービス提供件数の伸びで見えていない状況。
・基本的な図書館業務を理解しているが、まだ好き勝手な要望が比較的多いレベル。
・読みたい・知りたいことが増え、図書館への要望を言えるようになってくるレベル。
・5-1の図書館と5-2の図書館への分かれ道。

レベル5-1:成熟期型図書館・地域需要高度化
・「あの図書館に行けば、なんとかなるんじゃない?」と利用者に言わせれるレベル。
・『量より質』で勝負できる図書館が現れるレベル。
・現状の地域図書館では高度な要求に応えにくくなり図書館連携が求められるレベル。
・「自分で本を買ったり、調べた方が早いかな?」という人がちらほら出てくるレベル。
・時間とともに解決しなければならない大きな問題も多くなってきているレベル。
・問題が解決しないと5-2へ。解決できたら6へ。

レベル5-2:衰退期型図書館・図書館見限り化
・マニュアルはあるがルーチンワーク的なことしかできなくなってきているレベル。
・「図書館に行ってもなんもないし」と思われるレベル。
・地域住民がより良い図書館を探しに周辺図書館へ行ってしまうレベル。
・職員にも気力が見えないレベル。
・ようは存亡の危機。(何も財政難ってわけでなく。)
・現状を打破できる人材が出現すると5-3か5-1へ。

レベル5-3:再生期型図書館・地域協力化
・職員も地域住民も「せっかくの図書館なんだからどうにかしよう」と思うレベル。
・ある程度専門的知識を持つようになった地域の有志が多数集まって職員と協力体制を作るレベル。
・有志が中心になって人が人を呼ぶようになるレベル。
・首長が変わるとまだちょっと危なくなるレベル。

レベル6:活況期型図書館・活気のある地域化
・住民の日常生活の一部のような図書館のレベル。
・首長といえど、おいそれとは方向転換しにくいレベル。
・図書館を通じて地域活性化のアイデアが次々と住民により出されるレベル。

レベル7:安定期型図書館・安らぐ地域化
・地域住民にとって図書館が不可欠な要素なレベル。
・ここまでくると図書館は安泰。でも、地域住民のために図書館自身でさらなる発展を目指すレベル。
・図書館における問題も地域における問題もほとんどなく、安心した生活が送れるレベル。

レベルX:理想型図書館・理想的地域化
・究極の図書館…どんなのでしょう?想像できないや。
・その時の住民は本来の意味の自治体を作り出していることでしょう。

と、用語・見解ともめちゃくちゃですが、話の関係上例えばこんな感じだとしてください。
(全くの思いつきで書いているので、この手の話がどこかにないか、時間があったら論文とか調べてみます。)
(思いつきながら、日本の図書館の現状は最高に良い図書館で5-1で、地域的には4と5-1の間くらいだと思っています。なので6以上は想像しにくい。)

 で、突然何を言いたいかというと、そんな感じで対応が異なると思うので、例えばレベル2の図書館に「貸出数を増やしたからって良いってことない」と言っても、それは酷というもので、きっと図書館にも発展順序があるのでしょう。
 それを違えたら、例えば、レベル3の地域&図書館にレベル5のサービス展開しても、需要はほとんどないような感じなんじゃないかなぁ?

話がだいぶ逸れたけど、今日言いたかったことは…
・予約数は良い図書館の指標というよりは良い図書館になるための反省材料
・でも、図書館・地域の発展レベルや予約の種類と内容を精査しなければ、数値だけでは言えない面も大きい。
・それでも利用者は期待して待って(待たされて?笑)います
ってとこでしょうかねぇ?

|

« 都道府県立図書館の行方 | トップページ | 低きに流れる?? »

私的視点」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 都道府県立図書館の行方 | トップページ | 低きに流れる?? »