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都道府県立図書館の行方

 徳島新聞Webの2009年4月14日の記事『先細る書籍購入費 県立図書館、今後の展望開けず』(http://www.topics.or.jp/localNews/news/2009/04/2009_123967184969.html)という記事、徳島県立図書館の図書購入費(資料充実費)が〇九年度には三千二百三十万円まで減り、徳島市立図書館が指定管理者にしたときに「三千三百万を下回らない」という条件付きだったので、逆転したとのことなのですが…

いや、そんなにビックリすることでもないんじゃ?

 普通に、県と市の単位だと、分館の多い市などで、資料費が県立より多いってことはあるし、政令指定都市とかでも県立を越えているのは普通なんじゃないかなぁ…詳しい比較はまだしていないけど。

 都道府県立図書館で個人利用(個人貸出)ってしていないって10年数年ほど前の感覚(北海道立図書館はその頃普通に個人利用が閲覧以外できなかったので)でいたら、こっちの図書館に就職した頃には普通にどの都道府県立図書館でも(都立中央は除く)できることがわかって、ビックリしていたことがありました。
 幸いにも今勤めている自治体には県立図書館はないのですが、ある自治体では利用者の競合とかってないのでしょうか??
 イメージ的には、入門書的な資料の多い市町村立と専門的な資料の多い都道府県立という構造なのかもしれませんが、その逆の資料がお互い一切ないというわけでもないし、読み聞かせなどのお話会などはどちらもやっている状況のようなので、どうなんだろうと。
 もちろん、県立も市立も気軽に利用できる地域に住む住民にとっては、機会が増えるだけ良いという感じもしますから、それはそれで良いのでしょうが、実績値を出せと言われる市町村立図書館だと客足を取られる心配があるような気がしますけど…

 望ましい基準では市町村立図書館は『住民のために資料や情報の提供等直接的な援助を行う機関』とあり、都道府県立図書館は『市町村立図書館に対する援助』をし、図書館未設置の『市町村の求めに応じて,図書館の設置に関し必要な助言』をおこない、『住民の直接的利用に対応する体制も整備』していて、『図書館以外の社会教育施設や学校等とも連携』するということなのでしょう。
 サービスについては市町村立図書館のサービスを準用+αということなんで、それが望ましいというのだから、そうなのでしょうが…
 なんか、大型スーパーと個人小売店って感じがします。
 店員もたくさんいるし、品物も豊富だし、値段も個人小売店より安いとなると、大型スーパーが有利です。
 大型ショッピングモールの進出の話が出る時に、「商店街が寂れる云々」というイメージと一緒です。
 でも、多少閉店する個人小売店がありますが、長年の細やかなサービスで生き残っている個人小売店もあるので、同じように市町村立図書館も棲み分けが出来ているんだろうなぁとも思います。

 まぁ、それは大型スーパーが個人小売店を本気でつぶしに行っているわけではないからでもありますけどね。
 同じ商店という業種ですから、同じサービスは(採算や費用対効果をじっくり考えなければ)いくらでも可能ですし、革新的な商売法やサービスを思いつかない限り、個人商店には同じ土俵に上がるのは不利この上ない気もします。

 都道府県立が市町村立をつぶそうとはさらさら思っていないでしょうし、同じ資料を購入して同じようなサービスをしてもサービスレベルからするとなぜか市町村立が有利ってことが多々ありますから、共存できるのでしょうけどね。

 ただ、県立図書館の比重が『住民の直接的利用に対応する体制も整備』の名の下に「県民のために資料や情報の提供等直接的な援助を行う」に重点を置いているような気がします。
 『住民の直接的利用に対応する体制も整備』と『住民のために資料や情報の提供等直接的な援助を行う機関』の言葉の違いから感じる違いは、『受身的に行なう』と『積極的に行なう』という感じです。

 実際は『市町村立図書館に対する援助』というのが重点的に行なわれて欲しいところですが、相互貸借の物流(時として1千万円ほどかかるらしい)とレファレンスにおける協力(資料はたくさんありますからねぇ)くらいしか思いつきません。
 確かに、相互貸借の物流を各館郵送等でやっていたのを、県立図書館が主体となってやっていただけるのは、大変ありがたいことなんですけどね。(全都道府県でやっているわけではないようですが)

 どなたかが、「相互貸借で借りるから日本に1冊あれば良いってこと?」というような旨をおっしゃっていたのですが、そこまで極端でなくても、市町村立図書館で購入を迷っている資料があったとして、県立図書館が購入することがわかっていれば、「めったに利用がなさそうだから、やめよう」とか、逆に「県立でも購入するんだから自信を持って買おう」って選書の指針にもなりそうなのですが、前もって県立の購入資料を知ることはできないし、選書会議から購入までの速さからすると案外市町村立の方が早かったりするのですが、どこも資料費削減の状態の現在だと全県的に購入調整をしないと、「同じような資料はどの図書館にもあるけど、自分の読みたいなぁと思った資料は、県内どこもないってどういうこと?」ってことが多々起きるのではにないかなぁと。

 例えば、一般的に図書館に置かれる雑誌ではないが利用が見込める雑誌を「おたくの図書館ではこの雑誌は購入しておいてください」となれば、全県的に見ると多様な雑誌があるので、相互貸借で提供可能になるし…

 もちろん、図書でもそれをすると「相互貸借で借りるから県内に1冊あれば良いってこと?」と言われそうですが、雑誌の場合は多くは逆に年間通しての購入なので、買う買わないでなかなかリクエスト希望が通らないことも多いですし。
本当であれば、県立図書館がそういうどんどん雑誌を購入してくれたり、市町村立図書館の購入希望を満たしてくれると、『市町村立図書館に対する援助』になるのですけど。

 さて、以前県立図書館の方に「県立の利用者が減ってきて…」とか「レファレンス数が減ってきて…」と言われたのを聞いた時、「市町村立図書館と同じ方向性になっているんじゃないか」と思いました。
 もちろん、それは構わないですが、可能であれば住民に対して情報の提供等直接的な援助を行う機関としての市町村立図書館を立ててやってほしいなぁと。
資料数の差から、利用者が急ぎだと言うので、県立図書館に直接利用者に行ってもらったことがありますが、その逆はないですねぇ…自治体史などの資料は県に寄贈していますし。

 たぶん、『都道府県立図書館は住民に直接的な援助をするな』と書くと語弊があると思いますが、少なくても上下関係でもはっきりとした棲み分けでも良いので、差別化をはかってもらいたいと思っています。

 そこで棲み分けパターンなどを色々考えていると、
1.住民窓口は市町村立、都道府県立はそのバックアップに専念
・都道府県立でレファレンスまで潰してしまったら、もったいない気がしますけど、資料の貸出は原則市町村立図書館で(未設置自治体の利用者のみ直接BMなどで借りられる)にする。
・レファレンスも簡単なものは市町村立にまわし、専門的なもののみ都道府県立が回答する。
・もちろん、市町村立図書館への協力レファレンスは惜しまず、貸出カウンターに人を置かない分、全力で迅速に協力する。
・県内図書館の状況を把握し、的確なアドバイスをしたり、各市町村立図書館の除籍資料の保存と移管業務(A市立図書館の除籍資料で欲しい資料をB町立図書館へ送る業務)をしたり、購入予定資料情報や市町村立図書館が欲しいと思う情報を提供する。

2.県内の市町村立図書館の収集状況を把握し、専門的で高度な資料も含め、県内にない資料の収集に努め、保存機能を中心に運営していく
・例えば、埼玉県で行なわれている単館所蔵(県内に1冊しかない資料をその館で責任を持って保存する)方式では、県内に2冊あって2冊とも同時にというのが普通に有り得ますので、県内の残り冊数や所蔵していない資料の把握をしておく必要があると思います。
・それでも実際、ISBNの付いた資料については、この埼玉県立の取り組みは良いと思いますが、付いていない資料をどうするかが問題です。
・複数館ある都道府県はできるだけ1館にまとまって、残りを書庫的に利用する。

3.いっそ全部都道府県立図書館にしてしまう。
・PFIってわけではないですが、各自治体で建築し、職員も市町村立職員なんだけど県に出向みたいな職員によって運営され、システムや運営の大元は県立みたいな感じで。
・そうすると、全部県立の分館なので、システムは1つで横断検索っぽいのは分館なので簡単ですし、各自治体でバラバラなものよりシステムの料金が安く済むとか、人事的交流がはかりやすく図書館としての共通意識を持ちやすいとか、メリットが大きいような感じがしますので。

この3点に意見がまとまってしまいました。

 そうでなくても、現在、都道府県立図書館に市町村立図書館のためになるようなことを色々やってもらいたいので、とやかく言う私なのですが、「予算の関係で」と断られることばかり。
 何も、最初から「業者にお願いして作れ」とか「資料をじゃんじゃん買って」とかお金のかかることを前提には話していないのに、「そういうことをできる人がいない(から業者になる)」とかそういうのばかり。
 少なくても、市町村立図書館より充実した資料の蓄積があるわけですし、「どうすれば、お金をかけずにそれが実現できるか」と考えない発想がちょっと頭にきたりしました。

 市町村立図書館の『図書館ビジネス』は支援してくれないのでしょうか…(まぁ、できるのであれば、都道府県立自らが立ち直っているのでしょうけどね。笑)

 確かに、私の希望することを私が立ち上げて、「使ってみて」「やってみて」というのが可能なものもあります。
 でも、県内の全ての市町村立図書館に有志を募ったりするのは、「うちより小さな自治体の図書館司書の言うことに乗りたくはない」と考える大図書館のご意見番の方も多々おられるので、県でやって欲しいんですけどね。

 都道府県立図書館はどこへ向かっているのでしょうか、直接利用の個人利用者に対してだけでなく、市町村図書館とその職員にとっても使える図書館になってほしいなぁと思ってみたりします。
 なので、都道府県立図書館は、個人利用者の来館数や貸出数などの指標にこだわらず、どれだけ市町村図書館に有益な情報を発信し、都道府県内全体の図書館の把握と向上に努めて欲しいものです。
 都道府県立図書館自身も迷走を始めているのだから、本当だったらおかしな方向へ進む前にアドバイスがもらえるはずの市町村図書館も大迷走をはじめているのが現状のような気がします。

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