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図書館での複写の<補足>

全般的&実務的な図書館においてのコピーについては以前書いた『図書館における複写(コピー)の私的まとめ(著作権法31条1について)』(http://c-town.way-nifty.com/blog/2009/02/post-1aad.html)を参照していただくとして、ここを訪れてくれた人達の検索フレーズから基本部分と補足なんかを。
ほとんど、よくある質問は書いているんですけどね。


◎図書館における複写は著作権法(主に31条1)によります。
なので、全部コピーさせないのは図書館がいじわるしているわけでもない。
でも、図書館が複写の許可しないこともできる。
どうも利用者側に複写する権利があると思われている方が多いようで…


◎基本単位は1冊でなく1著作物です。
短篇集はそれぞれの短編で1著作物なので、単純に10ページの短編5つ(仮にA・B・C・D・E)ある50ページの本は、
A:5ページまで、B:5ページまで、…E:5ページまでの25ページまでは複写できますが、
Aの部分だけ10ページというのはできません。25ページより少ないのですがね。

極端な話、写り込みの協定がなければ、俳句17文字も1著作物なので、8文字までしか複写はできないってことです。
『複製物の写り込みに関するガイドライン』についてはこちらを参照してください。(http://www.jla.or.jp/fukusya/uturikomi.pdf

まぁ、このガイドラインも、図書館職員でさえ、勘違いしているところもあるけど、
・楽譜
・地図
・写真集・画集(書の著作物を含む)
・雑誌の最新号
は除外されているんですよねぇ…(ということで、楽譜は保護期間内であれば1曲の半分までです。短くても。)

同様に図書館間協力における現物貸借で借り受けた図書の複製に関するガイドライン(http://www.jla.or.jp/fukusya/taisyaku.pdf)は図書のみで雑誌は除外されているのに…何回か「利用者が複写したいと言っているのでガイドラインに基づいて可能か?」って聞かれました。
苦笑いしながら、「ガイドラインは図書だけですよ」って説明しましたけど。


◎基本提供可能単位
公表された著作物の一部分のコピーを一人につき一部のみです。

なかなか、『著作物』の概念が理解されないようで、上記短編集的なものや、最新号の雑誌なんかも「ここまでが1著作物」って理解されにくいとこですね。

で、利用者がよく「1枚だけですか?」と聞いてくるのですが、よく聞くと友達の分とか保存用というわけでなく、「1冊で1ページ分だけ」と『一部』を解釈する人がたまにいたりします。
実際は、1著作物単位なので、1ページであってもだめなこともあるんですけどね。そういう質問はちょっとかわいらしくもあります。

前にも書きましたが、図書館界では「半分を超えたら一部分とはいえない」ということから、「半分まで」という解釈ですけど、「半分!」はどうするか、微妙なところです。
私も半分は半分であって、一部分とは言わない気もしますが、49.99…%ってのもねぇ…
ので、「半分以下」とは書いたり言ったりしないようには気をつけています。(だからといって「半分未満」とかも言いにくいけど)

ゼンリンの地図は区分図が1著作物という主張ですので、全面(右面と左面)などの複写はできません。
まぁ、右か左かというわけではないので、紙で隠して真ん中というのは可ですけどね。うちでは道に沿って斜めにという要望もありましたけど。

検索フレーズで「2日に分けて」ってのもありましたが、何日に分けようが、その著作物単位なので、だめですって。
国立国会図書館だと数ヶ月前のも正しくチェックされて、不可と言われたようですし。
エライ!

え、他館で複写した残りの複写ですか?
聞かなかったことにします。笑
というか、だめです。
でも、チェックできないのが現状ですが。


◎上下巻・シリーズ・付録
これらは、それぞれ別物として扱われます。
「上下巻で1つの作品なんだから、上巻全部が複写可能なはずだ」っておっしゃる利用者もいますが、『上巻』という1つの著作物なのですし、もっと細かく書けば、その本文が1著作物です。前文とかは別に考えた方が無難。

基本はそうなのですが、合本は微妙。
おそらく、1冊にはなっているけど、目次などを見て元上巻・元下巻となっていれば、やはり短編集と同様に、それぞれの半分でしょうし、それがなく上下巻を読んでいないと区切りがわからない場合は、改めて半分までということなんでしょうね。

で、基本話のはずなのにいきなり応用話をちょっと。笑
小説系の雑誌、毎月少しずつ文章が載ります。
ある作家の書いた小説それらは次の月には大抵全部分複写可能になります。(その雑誌1冊の半分までならね。)
そうするとその連載終了後、出版されるだろう、単行本を最初から最後まで複写するのと同等になる…

ってことで、文芸誌は全部分複写可能は除外してくれと、権利者の一部が申しております。

これについては、作者死亡などで単行本出版に至らないケースもあるし、単行本で改変されていることもあるという理解なので、現状は上記応用はOK。と私は思っています。


◎図書館で書き写す行為
◎図書館でデジカメやスキャナで複製する行為
まず、前にも書いたけど後者。
少し前に、『デジタル万引き』って言葉が作られ、その後自粛傾向にありますけど、それと同じ考えで良いかと。

つまり、日本においては原則として利益窃盗が不可罰ですので、窃盗行為でもなく、撮影行為自体は私的使用目的の範囲内で著作物を複製する場合となるので、著作権法違反にもならない(複製したものつまり、その画像を送信したら、即違反。)。
お店の敷地内で行なわれることなので、お店は売り物に対し管理権を有するので、お客の本や雑誌の取扱いに制約を課すことは、可能なので、注意したり、やめさせたりできるのと一緒。

よくビニールで覆って書店で立ち読み禁止とか見るけど、そういうのも一緒。管理上のこと。ついでに、違反した利用者に立ち入り制限を課すことも自由。

図書館だと、立ち入り制限を課すのは微妙だけど、同様に「著作権法違反で」というのは、ちょっと難しい面があります。
「許可なく館内における撮影行為等を禁止します」と一文書いておいて、「資料管理上、ご遠慮いただいています」というのがベストかなぁ。

で、前者。
いわゆる文章のメモだったら、私的使用でしょうし、資料を痛めないので、大丈夫でしょう。
が、わざわざそれで検索してくるということは、その問題は、トレース行為なんじゃないかと勘ぐってみたりします。
トレースすることももちろん複製行為なのですが、私的使用だと言われるとやはり、もめます。

でも、先に書いたように、ボールペンやシャープペンでやられると、痛むので、管理上、やめてもらえますけど、痛まないように配慮されてだったら、「ご遠慮」ですかねぇ。

ついでに、手描きだと、自分のノートにキャラクターを描く程度であれば、大丈夫なのですが、それを販売したりするのは違法です。
もう少し書くと、それを図書館内などに常設展示するような場合は、著作権法に抵触することがあります。
例えば、お話会のメンバーが作ったぐりとぐらの看板だとか…

よくペットボトル持ち込みで注意すると、「フタはちゃんと締めているし、館内では飲んでいないからいいでしょ?」と言われるのと、一緒で、「それを真似て持ち込んだ人が汚したり飲んだりするから」みたいな。

私的使用でも複製一切禁止にできないのは、普通のメモ行為も抵触するからなのかなぁと。


◎DVD付録の扱い
DVDで、文字情報だけっていうのは、ほとんどないと思うので、動画が含まれていたら映画の著作物になります。
なので、購入した雑誌についているDVDは本来であれば許諾を得ないと貸し出せません。

でも、最近、「図書館での貸出以外のレンタル禁止」とか、ちゃんと書いてくれている出版者さんがいて、それはちょっと感動ものだったりしますが、原則、「貸出してよいか」と問い合わせるのが正当。

可能であれば、全出版者さんが、図書館で貸出OKかどうか明記しておいてもらいたいなぁ。


◎ブースで録音・撮影
管理上、目的外使用ということで、一律禁止というのも可能です。
もちろん、ダビング行為は、公共物だろうとそういうお店で置かれているものだろうと、私的使用範囲外なので、問題外です。
上のデジカメ撮影と同様、持ち込み機器だと管理上やめてもらえる。

で、知り合いの某氏が「それは盗撮だ」って言っていたので、それは違うんじゃないかと、ちょっと確認。
『映画の盗撮の防止に関する法律』が成立していますから、そういう言葉が出たのかもしれませんが…

この法律は著作権法30条1項の規定を適用しないこととしてあるので、そのため、映画の盗撮行為は複製権の侵害となり、刑事罰の対象になります。
もちろん、この法律を待たずに著作権法によれば、海賊版を流通させる目的をもって映画館で映画を録画したり録音する行為は、著作権法21条や著作権法119条1項により、刑事罰の対象になるのですが、これを読んでいる方がご存知のように著作権法30条1項は、その目的が著作物の私的使用であるならば、著作権侵害とならない旨を規定しているので、除外する法律が必要だったのでしょう。

なので、この法律以後は、「病気で入院中の弟のために」とかどんな理由であっても、映画館で映画を撮影しちゃいけないということになりました。

確かに、映画館における映画の録画・録音行為を禁止できる法律上の根拠として、(先にあげた図書館での管理上云々と同様に)施設管理権や誰も読みはしない観客との契約などもあるので、映画館内への録音録画機器の持ち込みを禁止し、実際の行為を制止することもできますし、見つけたら退場&再入場禁止も可能ですが、荷物チェックなどもちょっとねぇ…

この第2条3号で、映画の盗撮の定義が『映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画(映画館等における観衆から料金を受けて行われる上映に先立って観衆から料金を受けずに上映が行われるものを含み、著作権の目的となっているものに限る。以下単に「映画」という。)について、当該映画の影像の録画(著作権法第二条第一項第十四号に規定する録画をいう。)又は音声の録音(同項第十三号に規定する録音をいう。)をすること(当該映画の著作権者の許諾を得てする場合を除く。)をいう。 』ってなっています。

なので、「映画館等において」で図書館におけるホールでの上映会は含まれます。

でも、料金を受け取ってはいないので、撮影しても映画の盗撮には当たらないです。
ついでに書くと、ブースでの撮影は『映画館その他不特定又は多数の者』にも当たらないので、私の判断(映画の盗撮行為というわけでない)に軍配でしょうか。

もちろん、「管理上やめてね」ですけど。笑


…全然基本になっていないや。
でも、こんなに図書館の複写関係で検索している人が多いということは、それだけ、図書館で判断に困っているということでしょうか?
悩むなら、そこの出版者の編集部にでも電話すれば、解決するのですけどね。(時には認められているはずのことも「それはご遠慮ください」と禁止されちゃうこともありますし、逆もまたあったりするので、臆せず交渉してみるのも経験です。交渉の仕方で回答が変わることもあります。恐い編集者もいますが、優しい方もいますし。ちゃんと著作権担当者もいますからねぇ、大抵。)

おそらく、私のエントリーだって、カウンターで利用者を待たせて見ているわけではないでしょうから、図書館で複写関係の問題があって、それの回答を探しているみたいな感じでしょう。

一番の理想は判例をじゃんじゃん作ってもらうことで、金銭的に余裕のある一般利用者が、前にあげた判例ではないけど、「図書館が複写をさせてくれなかったのは、心外」ということで、裁判があれば良いのですけど、この手の裁判があまりないのは、「裁判を起こすほどのことではない」というのもありますが、一番最初にあるように、「図書館が複写の許可しないこともできる。」というのがあるので、複写範囲の判例にならないからなんでしょうね。

それなら、逆に権利者側が、「ここまで複写させるのは31条を満たさない!」って訴えなら、どこまで満たすかの判例になると思うのですが、そのためには、利用者が図書館で権利者の訴える範囲まで複写した事実が必要になるのですけど、図書館側は秘密を守る云々などもあり、申込書を提出しないでしょうし、利用者だってわざわざ権利者に「これだけ複写させてもらえたよ」なんて言わないでしょうし。利用者も訴えられる範疇になるでしょうし。

そうすると、権利者側の息がかかった人が、図書館で申請し、受け取った複製物を元に、訴える…そこまでやると複写申請が虚偽申請で逆に図書館に訴えられる可能性もあるし…と考えていくと面白いです。


次こそはDVDの上映権とか補償金とか書きたいけど、なかなか資料がなぁ…前も書いた気がするけど、補償金上乗せ分は権利者の言い値ですけどね。
法的にも補償金額は『相当の』とあるから、定価の数百%といったところでしょうか。

最近の複写関係の検索ワードからのエントリーでした☆

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コメント

補足の補足。笑
地図帳に関してコメントをいただいたので、補足説明。
確かに国立国会図書館のように、ゼンリンに限らず、「一冊の中に掲載されている図のひとつひとつを、ひとつの著作物とみなします。地図帳は、複数の著作物が集まったものとみなします。」ということで、その図の半分までという解釈もあります。

ただ、県立・市町村立レベルでは冊子体の地図は全体を1著作物と解釈しているところもありますし、上記のように1ページの地図の集合体と解釈する場合もあり、解釈が分かれている面もあります。

国土地理院の地図の加工物ということで、全体が1著作物と解釈していると書いている図書館もありますし、難しいところです。

個人的には判例を作ってもらうというのが良いのですが、雑誌の最新号の複写可能範囲とか、国立国会図書館と文化庁の解釈が微妙に違うこともあるので、ほんと困りますよね…

統計的には、国立国会図書館寄りの解釈が多いかもしれませんが、なかなか明記しているところも少なく、多数派だから正しいとも言えない点が難しくしているかもしれませんね…
個人的に統計とってみたいですが、そんな暇もなく。はい。

投稿: トーネコ | 2009年7月 9日 (木) 11:07

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