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図書館における表紙掲載論争の終焉?

タイゾーさんの『ピリ辛著作権相談室』の中の『Q43:公立図書館で貸し出す本の表紙をコピーしたり、ウェブにアップしたいんだけど…』(http://urheberrecht.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/43-1eed.html)のエントリーでわかりやすく記述してあるので、私なんぞの出る幕はないのですが、私なりのメモ的考察。

みなさん御存じのように著作権法が改正され、図書館にとって恩恵を得たり、サービス向上になりそうだったりするところもありますし、見た目は「おお~良くなるんだな」と思ってよく読むと「ただし~…」となっていて結局微妙だったりな今回の改正ですが…

今回の話に出てくるのは、著作権法第四十七条の二。

(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等)
第四十七条の二  美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。


 私もこの条項は読んでいたのですが、普通に「オークションサイトなどでのサムネイル画像とかのことだったよな…」と先入観(文化庁のページの概説(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html)に『インターネット販売等での美術品等の画像掲載に係る権利制限』と書いてありましたし…)で読んでいたので、やっぱりまだまだ奥が深いなぁと。
ちなみに、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三は譲渡権と貸与権のことです。

 ピリ辛著作権相談室のQ43によると、表紙はテキストベースのようなものは元から大丈夫だし、絵や写真が使われている表紙は『著作権法コンメンタール別冊 平成21年改正解説』(池村聡著,勁草書房,2010.05.)により今回の改正で適用されるとのこと。
なので、普通の図書館は貸与権はクリア(正確に書くと第二十六条の三の貸与権というよりは、第三十八条4より営利を目的としないから公衆に貸与できるなんですが…(そのためクリアとしない解釈もありか??))しているわけだし、政令、省令にある条件を満たせばOKということになります。

で、逆に、図書館の資料で当てはまらなさそうなものを…とひねくれて考えてみると…
タイトルが俳句とか詩になっていると、もちろんその作品自体は言語の著作物として保護を受けるのでしょうが、タイトルとしても機能しているので、その辺は問題ないかと思われます。
 でも、参考資料とか貸出禁止資料はどうでしょう?条文上は『複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合』とあるので、最初から閲覧のみで貸与ではない資料は当てはまらないかもしれません。(広辞苑とかは基本表紙は字だから良いでしょうけどね。)
 もちろん、館内閲覧も貸与だとしてしまうと、雑誌付録DVDの閲覧としてブースで視聴させる行為が貸与になってしまいすから、どっちをとるか…
 要はやっぱり解釈論になるといったところでしょうか?
 それとも、「貸与しようとすればできる資料だけど、図書館運営上貸与しないことを決めた資料なので…」と解釈順序なんか考え出すと、より混乱しちゃいます。笑

 以前の著作権法では基本的に許諾を得てからでしたが(もちろん、引用という解釈もなくはなかったのですが、その書評なり紹介に表紙画像は本当に必要か(書評は本の表紙の評論でなく中身のなんだし。)と言われると、どうでしょう?と考える人もいて、微妙でしたけど。)、今後はできる方の解釈で定着すると良いなぁと思います。

 さて、この場合の条件としてあがっている政令と省令をそのまま表示すると長いので、上記文化庁のページを参照してもらうことにして、それぞれについて見てみると…

 著作権法施行令の一部を改正する政令の第七条の二では、『表示の大きさ又は精度が文部科学省令で定める基準に適合するものとなるようにすること。』ということが書いてあり、著作権法施行規則の一部を改正する省令の第四条の二で、詳しく書いてあります。
印刷物とデジタル方式に分けられ、印刷物では『表示の大きさが五十平方センチメートル以下』つまり、大体7cm×7cmくらい。ということは、A4用紙が210mm×294mmだから、案外大きいかも?

 で、デジタル方式で普通に何の処理もしない画像として載せる場合は、『画素数が三万二千四百以下であること。』なので、180ピクセル×180ピクセル…案外小さいかも?でも、Google Booksで出てくる表紙のサムネイル画像は54~55ピクセル×80ピクセルだからその倍はOKということなんでしょう。
コピーガードとか画像にかけてある場合は『画素数が九万以下であること。』とあるので、300ピクセル×300ピクセル…ちょうどAmazonでの画像(サムネイル画像ではなく)くらいのサイズ。

 さてさて、美術品のカタログ掲載などの問題で裁判というのはたまに見ますが、本の表紙画像を載せたから裁判って話は聞きませんから、判例がない、つまりは明確な回答というのが難しいってことです。
(例によっての発言ですが、例えば日図協あたりで、『表紙を載せるのは著作権法上も大丈夫!』って明記することによって、出版社が「それは困る」とでも裁判になってくれると判例が出るのですが、出版社側が「まぁ、図書館で紹介されたら一応宣伝になるし…」と裁判をしないとかが普通でしょうか。まぁ、日図協もそんな明記の仕方はしないで、「各館の判断で…」なんでしょうけど。)

 今回の条件については、取引の態様その他の事情に照らして、必要と認められる限度のもので、公正な慣行に合致すると認められるものであることが前提なのですが、基本的に図書館で「この図書は絶対買ってはいけない」とかズタボロに書くということはないでしょうし、最近は黙認という状態ですから、黙認≠OKではないのですが、公正な慣行に近いものがあるんじゃないかなぁと。

 また、CRICのケーススタディ著作権第3集のQ11でも、図書館での表紙利用について記述があります(http://www.cric.or.jp/qa/cs03/cs03_11_qa.html)。
 個人的には『最近は「図書館だより」などで新刊紹介の際に、表紙を使うことについて、無断でもよいのでは、という見解が示されており、筆者もほぼこの見解に賛成です。』という意見がちょっとびっくりなのですが…いや、賛成してくれる分には良いのですが、以前CRICに著作権に絡む相談をした時に、紋切型で、予想通りの堅い回答しかもらえなくて、がっかりしたことがあったのでね…
 ただ、今回の著作権法改正は前述の通り、『貸与』の目的がある資料についてなので、『お話会・読み聞かせ団体等による著作物の利用について』は図書館ではない団体と考えるわけですから、今回の改正で話は分ける必要があるんじゃないかと思ってみたりしています。(次期改訂くらいに記述が増えるかな?)

 これで、前述の貸出しない資料で表紙が著作物のものの掲載はどう考えるかというのと、今まで普通に許諾をもらっていても、許諾してくれなかった某出版社がどう出るかという部分は考えどころですが、条件さえ満たしていれば、図書館で作成する印刷物にもWebページにも載せられそうです。

 ということで、条件付きながら、図書館における表紙掲載問題という長年の論争の終焉ような感じ(細かい論争はありそうではありますが。)で、ほっとしたのも束の間、今後は電子書籍と図書館と著作権の問題が大きな悩みになっていくような気がしています。
 電子書籍のフォーマット形式のコンバート可能性とか、館内閲覧のみになるのか、貸出方法はどうなるのか(というかそもそも可能かどうか)とか、不透明な部分が多いので難しいところですが、早い図書館だとその対応を考え始めていますし、しばらく傍観しようとしている図書館もありますし、もちろん何も考えていない図書館だってあったりします。笑
 また、このことを考える上では、いつもながら著作権法が時代にそぐわないので、図書館職員の悩みは尽きないんでしょうね。

 例えば『「図書館内での電子書籍端末の貸し出し」は違法である可能性大、米法律系ブログが指摘』(http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=1608)とあるのですが、この記事のことが正しいとすれば『ユーザー規約』に中のソフト(電子書籍含む)の貸出禁止がうたわれているそうで、DVDの補償金問題と同様に著作権法では大丈夫であっても、契約のしばりが優先されるようなものですから、貸出を考えたい図書館員は早々に行動を起こして、規約を改正してもらう必要があるでしょうね。
 図書館界で意見をちゃんと言わないと、図書館で電子書籍の閲覧すらままならない状況になるんじゃないかと危惧している今日この頃だったりします。

 図書館の中の私としては、タイゾーさんより先に図書館の人がそういう指摘をしていて欲しかったなぁと思ったり、逆に図書館員はこの改正でこの解釈をすでに当たり前に思っているのならすごいなぁと思ってみたりしているのですが、もう少し、色々な方の判断や解釈を見てみたいところです。

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