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震災と図書館

今回の震災で、図書館の中の人として、色々と思うことがありましたので、その覚え書きとしてキータッチの進むままに書いていこうと思います。

東北各地の図書館の被災状況を聞いていますと、数千冊の資料が落下したぐらいではどうも被災したとはちょっと思えない自分がいる一方で、資料が1冊落下したって被災は被災なのかなぁと思ったりしています。(その辺の話は後述)

私の立場上、図書館の中の人である以上に、公務員ですから、震災当日は落下した資料に後ろ髪をひかれつつも、避難所の開設などの業務に携わっていました。
まぁ、私のいる所はそう長期戦になるようなところではなかったので、次の日には資料を棚に戻す作業をして、その翌日には通常開館となりましたが…

さて、当日の話。
避難所開設に動員されるまでに、利用者から一本の電話が。「図書館、今日、やってますか?」と。
こちらとしては、資料が数千冊落ちなければ、開館してあげたいとこなんですが、安全も確認されていない状態で停電で照明もシステムも停止した状態でどうすれと…
もちろん、地震は日中でしたから、まだ本は読めます。システムだって、先日蔵書点検でPOT(ハンディーターミナル)で電池を交換したので、貸出は可能なはず。
でも、足の踏み場のない書架間があったり、書架のゆがみとかのチェックも終わっていない状態で、開けるのはちょっと無謀でしたし…
(まぁ、次の日も別の方から「え、なんで図書館休館なの?○○図書館はやっているって言っていたよ?そこ(○○図書館より)より小さいでしょ?」ってクレームの電話があったりしたんですが…)

ひとまず、館長などの判断で、当日は臨時休館。次の日も元に戻す作業で臨時休館ということが決まりました。

一方、避難所開設するために、避難所となっている小学校へ駆けつけましたが、夕方まで私のいる避難所に避難される方はいませんでした。
日が落ちる頃、ポツポツ避難される方が来ましたが、自治体内が停電ということもあり、自家発電機が用意されていないこともあり、真っ暗なので「まぁ、いいや帰ります」って方も。

自治体内放送は聞き取りにくいし、情報収集に使っていた携帯電話は電池切れという状況の中、東北が大変なことになっているということがわかったのがもう少し先の話になってしまいました。(避難所だったけどラジオもなかった…泣)

避難所の話は置いておいて、その日感じたのが、情報収集手段が断たれた時の様々な段取りの悪さや、FAX対応電話が(電源がないと回線は無事でも)使えないってことと、岩手県広聴広報課のTwitter(http://twitter.com/#!/pref_iwate)など、自治体内サーバがダウンした時に情報発信手段を日ごろから持っていることの素晴らしさですかねぇ…

最後の部分は重要。
というのも、東北各地の自治体や図書館は自前等のサーバを用意してWebサイトを公開しているわけなのですが、そのWebサーバが長期停電等でだめになった時、その自治体内の人は市役所に行くか回線が無事なら電話するしか情報取得の手段がありません。
急きょ、別のサイトで開設することも可能ですが、その広報は時間もかかりますし、そんなすぐにはGoogleにも載りませんし。
私の友人の安否確認もお互い携帯の電池切れで連絡が数日つかなかったし、その図書館のサイト自体が見えない状態だったので、停電等でダウンなのか津波でだめになったのか非常に心配していたとこでしたからね…。

図書館の話に戻して…
うちの図書館は数千冊資料が落下したのは前述の通りなのですが、落ち方に特徴がありました。
書架は低めに設計してあるのですが、一番上の棚と天板に載せていた資料がことごとく落ちました。
別の高書架にあった新聞の縮刷版はもっと大変な状態でしたが…
しかし、その一方で児童コーナーの方は立て掛けていた数冊の資料がパタンと倒れて落ちただけで、それは普段でもたまに倒れますから無傷と言っても良い程度でした。
他の図書館の人の話でも、「本震の時にはなんともなかったけど、余震の時にバタバタ落ちた」って話は聞きますから、揺れの向きなどもあるんだろうなぁと。
実際、ブックエンドとかで押さえていると落ちにくいって話もありますが、ブックエンドごとまとめて引っ張り落とされたような箇所もあり、止めていないところでは確かに落ちているところもありましたが、落ちないで横に流れただけの感じなところもありました。
キチキチに詰まっていた棚では、湾曲に資料が飛び出て真ん中辺は半分以上飛び出たところがあり、「これもうちょっと(時間が長く)揺れたらここの棚全部落ちたよね…」ってところもありました。
ということは、まず揺れの向きや揺れる時間、書架の高さや棚の滑りやすさが関係しているのかなぁと。

落ちた資料を見て、思ったのが、どうやったら被害を少なくできるか…(いやもちろん想定外の揺れには対応できないでしょうけど)
まず、資料落下手前でバーがあるような落下防止装置。
日本ファイリングさんのブックキーパー(http://www.nipponfiling.co.jp/products/library/bookshelf/book_keeper.html)なんかがそういう感じなのですが、例えばうちの館で落下したような新聞の縮刷版10カ月分くらいの本が同時に落ちようとするのを支えるのはかなりの強度が必要で、資料の大きさや揺れのリズムによってはバー乗り越えちゃったり、その棚にある資料の重さによっては落ちる時の力でバーが変形したりするかも?と思ったりしています。
次に、資料落下防止の滑り止め。
でも、摩擦係数が大きくなるほど、棚から本が抜きにくくなるんじゃないか…ちょっと加減が難しいか。端に松脂みたいなのを塗るとか…。キハラさんですでに安全安心シート(http://www.kihara-lib.co.jp/anshin.htm)というシート状の滑り止めが販売されていて、研究の成果のような良い塩梅なのでしょうが、全棚付けると財政難の公共図書館には痛い出費か…もちろん落ちやすい上部の棚だけという手もあるけど…と思ってみたり。
それなら、全棚少し内側に傾斜なんてどうかな…
どうせ、揺れが大きければどんな対策であっても、落ちるんだし、ほぼ水平に見えるんだけど、ビー玉をのせると内側に転がっていくようなほんの数度の傾斜が内側向きにあると、少しは軽減されるかも?
確かに傾斜棚っていうのはブックトラックとかも含めてありますが、あんなに傾斜するのではなく、どのくらいの傾斜でどのくらいの効果があるのかどこかで実験してくれないかなぁ…きっと数度違うだけでだいぶ違うと思うんだが。その程度であれば傾斜書架みたいに幅を取らないで済むと思うし。

いっそ、逆転の発想で、どうやって安全に資料を落とすかと考えるのも面白そうなのですが、棚がスイングしてきたりしたら、すごく危ないなぁ…と。

そんな事を考えながら、落下した資料をどうやって効率的に並べ直すか少し思案して…
まず、床にある資料を順番どうでも良いから、背ラベルが見えるようにそのまま床に並べる。
次に、書架に並べるときに請求記号の順番に直すという手順にすることにしました。落下なので、だいたい同じような位置に落ちていますからね。
Picasaで被害状況と復旧状況を公開していたゆうき図書館さんのページ(https://picasaweb.google.com/118182004366193053491)を見たら、同じような手順でしたね…

そんなこんなで、CDケースの修理などが残りましたが、ひとまず安全確認と落下資料の復旧が1日で終了し、展示コーナーの資料も集めて次の日からの開館に備えました。

震災から2日目。
まぁ、やっぱり「今日はやっていますか?」って電話があり、「はい、開館しています」って言えるのは開館しようにもできない図書館には悪いなぁと思いつつも、嬉しいものです。
来館者から、「図書館は大丈夫だったの?」訊かれたので、展示コーナーに掲示していた自館の被害状況の写真を案内して、「やっぱり大変だったんだねぇ」と言われましたが、「2日目には開館できたんですから、(被害状況は)軽いもんです」って気分でした。(その時、利用者には「そうですねぇ…」ってごまかし笑いしていたと思いますけど)

で、3日目は月曜日ですから休館でしたけど、4日目の話。
東京電力の計画停電の情報は1週間も経ったら広く知れ渡ったと思いますが、その日は計画停電2日目。
東京電力のページに載っていた情報をわかりやすく自治体内の部分だけ抜き出して大きく掲示しておきました。
それから数日間、その掲示版を(掲示版が低かったこともあり)しゃがんで見たり、携帯電話で写真を撮っている利用者がたくさんいました。
そんな中、印象深かったのが、「あの掲示板にある情報、どこから見つけてきたんだい?」と聞かれたこと。
その頃には、自治体のページでもグループ分けなどがアップされていたと思いましたが、「東京電力のWebページと自治体のページの情報からです」と返答。
その利用者曰く、「自分の住んでいるところの自治体ではこういう大事なことを広報しないし、自分の所が何グループかわからない」と。
計画停電発動すぐならともかく、その頃になっても広報しない自治体ってないような気がしましたが、知りたいというレファレンスでしたので、東京電力の該当ページを見せながら、たまたまその方の住んでいる場所は2グループに分かれた場所だったのでその追加説明も加えて、説明したら、とても感謝されました。
「仕事中に(調べてくれて)悪いね」と言われたので、咄嗟に「情報を見つけるのが仕事ですから」なんてある意味すごいことを言ったような気がします。笑

それでも、しばらくは掲示板を撮影する人が絶えなかったですから、必要なWeb情報に触れられない人ってどんだけ多いことか…って痛感しました。

話は変わって、各図書館の図書館の被害状況や必要な支援について有志の手によって立ち上げられたWebページ(http://savemlak.jp/wiki/saveMLAK)があります。
先日も記事になっていたようですが、(当初のページはこっち(http://www45.atwiki.jp/savelibrary/)ですが)
しかしながら、Twitterでそういうことをやっているという情報があったので、私も編集に参加しようか迷いましたが、やめておきました。

というのも、前述のように、どの館がどのくらい資料が落下したか、天井が剥がれたか、書架にダメージがあったかなどの情報はある程度把握していたのですが、そんな数日のうちに復旧し通常開館している館の情報って必要だろうか?被災と言えば確かに被災なのでしょうが、そういう図書館の利用者から見ると、自分の行きたい図書館が今日やっているか否かの情報が(特に計画停電絡みの臨時休館など)必要なんじゃないかなぁと思ったことと(加えて、一般利用者はそういうサイトがあることも知らないので、最寄りの図書館のサイトにつなげてみて「あれ?出ない」ってことで電話ってパターンだろうし)、東北のとある図書館職員の話では「今、図書館でなく避難所にいて避難者の対応をしなければならないので、自館の状況把握どころじゃない」と言われたことも心にひっかかっていたということもあります。

また、原発問題で避難せざるを得なかった図書館職員からは「地震で避難した後に立ち入り制限になったから中がどうなっているか把握できてない」って話も聞きました。
私の友人の図書館職員が勤めている館の情報は被害が把握しきれなかったからか、なかなか情報が出てませんでしたし、停電が長期にわたった地域などでは、ネットにつなぐこともままならない状況でもありましたので、どういう情報伝達手段が有効か考えさせられることも多々ありました。
(各市町村立図書館自身もバタバタした状況で、うちの館も県立から来たメールにすぐ気付かなかったですし、電話回線ズタズタであればFAXも電話もできませんからねぇ…ほんと電気と電話回線がだめだと、動きが取れないことを痛感しました。)

もちろん、こうやってすぐに動ける有志の方々は素晴らしいと思っていますし、少しずつライフラインが復旧し始めた今はこれからどうするかということを知ることができる点で、とても重要だと思いますが、逆に今となったら、「数百~数千の資料の落下について追記する意味あるかなぁ?」とやっぱり書けず仕舞いだったりしますけど。

で、改めてこのサイトを拝見すると、被災情報が上書きされている部分(例えば以前は「○○のため△△日まで閉館中」だったのが「□□日から開館」など)もあり、前述のようにそこを見た利用者のために現在を知るというのも良いのですが、過去と現在を分けたら良いのではないかと思ったりします。
急に立ち上げられたことや多人数による編集ということもあり、細かいところでは「○○日」という表記があってそれが今見ると3月なのか4月なのか5月なのかわからないなど、なかなか難しい部分があるなぁと感じました。

先日テレビで見た図書館はまだまだ復旧の「ふ」の字もままならない状況でしたので、改めてショックを受けましたが、落ち着いて通常開館に戻った図書館から順に「あの時はこんな状況だった」と書く館が増えても良いんじゃないかなぁとちょっと惜しい気もします。

他にも、有志といえば、絵本の読み聞かせや避難所への図書の寄贈などの話も早々に出ていたようですが、一方で「そんな(図書)の置く場所なんかない」とか「(体を休めたいとか絵本の読み聞かせなんか聞きたくないなどで)その間どけって言うのか」って話も出ることもあるようですので、押し付けにならないように、他の避難者も考慮しながら活動するのって難しいなぁと思いながら今日に至っています。

話は二転しまして、生きることに一生懸命な時って心に余裕が全くないから、今でこそ音楽などが心に染みいるという話がありますけど、おそらく震災1週間くらいは難しかったんだろうなぁと思っていた矢先、某所から元気の出る本って何かないかって話が。
個人的には「えーこの時期って難しいなぁ」と悩みましたが、「いくらなんでも不遇な状態から立身出世した時代小説や長編小説なんか、元気のない人は読む気にもならないだろう」ってことで、できるだけスッと読める詩的なものや、大人が読んでもちょっと笑顔になれる絵本など、そんな感じのものをチョイスしたのですが、果たしてその評価は…笑(聞きに来た人のそのまた向こうですから…)
自分でも「この時期でなくて、例えば、あと半年後とかなら、また別の本を紹介するんだろうな…」って思う今日この頃です。

ってことで、だらだら書いた感じですが、まとめると…
・日ごろから自治体や図書館は手元でない別サーバの公式情報発信手段を持った方が良い
・Web情報はまだまだ見られていない人が多いし、長期停電の時は特に考える必要がある
・図書館資料や図書館が機能しなくても、情報を色々と収集してその状況に応じた発信を考えよう
・どのタイミングで何をするのかよく考えないと、良かれが自己満足になりかねないことも
ってことでしょうか…

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