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貸出猶予はする?しない?

テレビでやっていた替え歌が気分転換に面白かったので、自分でも作ってみようと…図書館の歌を作ってみたのですが、替え歌の歌詞は、基本的に著作権の保護期間にあるものは、同一性保持権にひっかかりますから、一般の人がカラオケなどでその場でおふざけで歌う分には良いのでしょうけど、公開するには著作権者の許諾が必要なのですよね…著作権についてあーだこーだ言っている私のブログにはもちろん載せられません。笑

今回の震災で、図書などが入手できない被災地に限ってレファレンスの回答のページをFAX可能にするなど、一時的・条件付きではあっても、著作権の保護を制限可能にする申し合わせが迅速に進行されたことは喜ばしいことです。
もう少し可能であれば、被災地の図書館に限って、予想されるレファレンスの情報を掲示板に貼ることが出来たりすれば、良かったのに…と思ったりしています。
まぁ、ネットで読み聞かせをしたいなどの動きもあったようですけど、もし可能になってもネットに接続できる環境で、プロジェクターも利用できるとなると電気がないとそもそも難しいですよね。(それと同じで、被災地の図書館だと複写機も動かないか…)
図書館が開館できない状況で読み聞かせをする場合は、避難所内に押しかけずに、避難所外の空きスペースにシートやござを敷いて青空読み聞かせなんかも良いかもしれませんね。

さて、この震災直前に著作権法との兼ね合いで物議を醸すようなことがありました。
著者が「一定期間図書館では貸さないで」と書いてある例の件です。
著作権法などで認められているので無視するか、著作者の主張を配慮するか…
だいぶあちこちで議論されているようですが、その図書館職員の考え方によってそもそも平行線になるような話です。
結論は非常に難解でしょう。

『全ての人に本を読む機会を提供する図書館の公共性』は、雑誌の最新号や参考資料、新聞など貸出していない資料はたくさんありますから、貸出でなく、閲覧だって良いわけです。
その著者の言っているのは、貸し出しの猶予であって、閲覧や所蔵もやめろとは言っていないようですし。
もちろん、図書館側が心配している『主張が増えた場合が心配』ってのは切実です。
今回は半年ですが、3年間とかいっそ所蔵するなとか、貸出回数に制限をするとか、好きなことが書かれると、それを全部チェックして管理するのは予算も人員も減らされている状況では無理です。
また、こっちはすぐ貸出でOKだけど、これはダメとか、システム上や資料管理が難しいものになってしまいます。カスタマイズするお金なんて出て来はしません。

一方で、1Q84などベストセラーに見られるように、「買いたくないから1年でも2年でも待つ」って人はとても多くいます。
その反面、「数か月待ちになります」って言う職員に対し、「俺は税金払っているんだからたくさん買って早く回るようにすれ」ってクレームを言う利用者もいます。
統計上正確なデータではないのですが、複本をどうするかという件は図書館だってきちんと考えているのに、「あの館は○冊も所蔵している」ってセンセーショナルに報道されたりしますが、大体計算すると10~20人くらいの予約につき1冊というパターンが多いような気がします。
100万人人口のところと1万人人口の図書館で複本所蔵数は違うのは当たり前なのですが、こういう場合には十把一絡げで『図書館』ですからねぇ…小さな図書館だと精々2冊くらいです。
複本を買わずに済むのであれば、図書館としては良い点もあります。他の資料にまわせるんだし。
もっと極論すれば、相互貸借で借りられるのだから、県内1冊でまかなうってことだって、国内1冊でいい…って書くと、「あれ?」って違和感も出て来ます。

多くの問題が複雑に絡んでいるので、それを1つずつ言及していくと、ただでさえいつも長いと言われるエントリーがますます長く…笑
(ひとまず書いてみたけど…自分でも長すぎだと。なので途中端折ることに。笑)
図書館の理念や理想は今回は置いておいて(だって知る権利云々や利用の対価の利用はどこまでかにも言及の必要があるから)、

1.利用者の行動と言い分(もちろん全てでない)
・『節約本にあるように』気になる本は買わずに図書館にリクエスト
・『税金で運営している図書館なんだから』図書館はあまり読まれない本よりニーズある本を買うべき
・お金は使いたくないから『一応予約しておく』
・予約キャンセルは待ちくたびれたからだけど『定価で買いたくはないから古本屋で』

2.行政上のプレッシャー
・数値化できて図書館をよく知らない首脳陣でもわかる『成果指標が貸出数くらい』しかない
・利用者満足度でも1で『満たされない利用者の図書館評価は低くその数が多い』
・首長への手紙や議員(の知り合い)から「1年以上も借りられない」という話があるので対応せよ

ってことがあるから、あまりどうかなぁと思う図書でもマスコミで話題になった本がリクエストが殺到するので対応せざるを得ないですし、予約一定数で複本というのも妥協点を見出してのことだと思います。(何も10件予約があって10冊買っているわけでない。)
1の最後は案外重要なことで、経験則での話です。
キャンセルの理由を知る機会はあまりないのですが、本屋で買ったからという人より古本屋で買った人の方が多いです。
(別の話だけど、弁償本でも本屋で注文すればすぐ手に入るのに「古本屋で探したけどなかったのでもう少し待ってもらえますか?」って言われたことありますし。)

という現状でこの件をどうするか各図書館で話し合われたと思うのですが、高崎市立図書館さんのように(http://lib.city.takasaki.gunma.jp/contents/files/20110414.pdf)明示している館は少ないと思います。良くも悪くもちゃんと表明するということは素晴らしいです!
そんな中、隣の館はどうなんだろう?ということもあり、横断検索が近年は充実してきていますから、サクッと確認すると、とある県では1/3が『さらば雑司ケ谷』を所蔵していて、その1/3が『雑司ケ谷R.I.P.』を所蔵していて、その1/3が貸出を止めているという状況のようです。
こう書くと多くの図書館が著者の主張を認めているように見えますが、1/27…つまり3~4%なので、そう多くは感じません。
全国調べるのは大変なので、おそらく著者の方自身はチェックされているかもしれませんけど、通常続刊は購入する館が多いと思いますが、今のところまだ様子見のままという館も多いのではないかと思います。
個人的には、その期限が過ぎた後の売れ行きが気になるところではありますが…ただ、その時期には絶版ってことも考えられなくはないですが。

それらを踏まえて、今回の件での私の意見は、『貸出猶予は構わないが、ちゃんと条件と環境を整備すべき』です。
その考えられる条件と環境というのは…

A.貸出猶予は○か月と決めて表紙に大きく明示する
・新刊を十把一絡げに6か月などとすると、作家さんによっては考えが異なることもあるでしょうし、だからといって、どこぞやの約款みたいに小さい字や後書きのどこにあるかわからないというより、図書館側も利用者もわかりやすいように表紙に明示してあれば、図書館としても利用者の「なんで貸さないんだ」ってのにも説明しやすいですし。

B.再販売価格維持制度の改変
・1つ目は貸出猶予期間後は2割ほど安く買えるように、2つ目は古本屋から著者が収入を得られるようにするなど、改正すれば、図書館としても「安く新刊が買えるから猶予期間後でもいいかな」って思う館も増えるかも…

C.いつでもその本が買えるように
・一見、貸出猶予と関係なさそうですが、絶版を考えて複本を買うこともないですし、貸出猶予期間が長いとどうするか考えているうちに絶版ってこともありますので、その仕組みは出版界で是非作って欲しいです。

D.図書館システムの改変に出資を
・貸出猶予期間がまちまちの場合、Aのようにわかりやすくなっていれば、商用MARCなどでタグを作るのは可能なはず。でも、それをシステムに反映できるようにするためには、システム屋のカスタマイズが必要なのですが、図書館側にはその費用負担は無理ですので。

短くしたら、ちょっと誤解を生みそうな表現になったところもありますが、まとめたらこんな感じになりました。
所蔵猶予や閲覧猶予っていうのなら、また問題は違うと思うんですけどね。所蔵猶予であれば参考図書など図書館所蔵向けなどの図書が困ることになりますからね。

雑誌の複写の一定期間云々の話も似ているところがあるのですが、権利者の一部は一部の情報が全てだと思って、主張したいことを主張して、だからといって、それで困る人のことは知っちゃことないっていうのはどうもなぁ…(DVDの補償金もそう。ちゃんと機関ができれば色々な問題が解決するのに作りやしない)

ということで、今回の件は、貸出のみ猶予ということのようなので、わからなくはないし、考える余地はあると思いますが、仕組みが整わないのに、個別にやられるのは図書館側の人間としては問題があると思います。

ただ、ベストセラーって売上が多いものですよね、図書館の購入数がそれにどれだけ反映されているかと考えると、買う人はちゃんと買っているわけです。他は古本屋で買う人もいるし、図書館で何か月待っても予約しておく人もいます。

古本屋で買う人はおそらくその定価では買いたくない人でしょうし、予約待ちの人はいつまでも(図書館に文句を言いながらも)待つでしょうから、あまり意味がないかもしれません。

仕組みが確立していない状況で貸出猶予を主張したのは今回まだ1人なので、統計上の信頼性は少ないでしょうが、あれだけ大々的に記事になりましたから、その説明責任として、最初の巻の売れ行きと比べて、増えたのか減ったのか、発売から半年間の各月と半年後の1か月の売れた数を公表する必要があると思っています。
最初の巻から増えていれば、話題になったことと、最初の巻を図書館で読んで買った人が増えたということで、減ったら、図書館で買っていた分が買われなかったことになるでしょう。
また、本って発売後話題になるとかならなければ売れ行きが伸びていくものでもないでしょうから、発売後1か月目~半年目の各月の数値変化から見て半年後に急にあがったら図書館のせいでしょうし…
まぁ、「半年間売った合計数<半年後1か月で売った数」なんてことはないと思いますが、あったら笑えちゃいますね。
私も覚えていたら、同じとこの横断検索をしてみて、続刊として最初の巻と購入されたか確認してみますが…半年後は他の資料を買うことに気が行って、結局図書館で買い控えに終わる可能性もなくもないですけど。

あれ?この件に関して図書館の某団体は声明とか出したんだろうか?バタバタしていて確認してないや。

もしなんなら、図書館員大賞の話ではないですが、文芸書は図書館に置かないってのも面白いと思ったりしますが…一応文学という文化があるので、それは極論でしょうけどね。
ので、私の立ち位置としては条件付き賛成ということで。

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