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貸出制限依頼について思うこと

前回に引き続いて、『もしも、新刊を出す作家が、図書館に貸出猶予を求めたら』(笑)です。

まぁ、「出てくるのは時間の問題だろうなぁ」と思っていたら、詳伝社から出された『陰謀の天皇金貨』(加治 将一/著)が早速『公立図書館では貸出さないで』と書いています。
それも、あとがきや奥付けでなく、巻頭に『本書の公立図書館での貸出をご遠慮願います』とあります。(まぁ、まだ文章は書かれていますが。)

『雑司ケ谷R.I.P.』は大きく取り上げられましたが、こちらの方はまだそんなに…といった感もあります。

でも、所蔵する・しないに関わらず、作家さんのお願い攻撃はどんどん増えそうな勢いなので、やはりちゃんと図書館内で検討する必要があると思います。
こちらも、間違えないでおかないといけない点としては『貸出さないで』ということで、『所蔵するな』『閲覧するな』というわけではないことは前回と一緒です。

すでに所蔵して貸出しているところはありますが、まだ発売されたばかりなので、今後どのくらいの図書館が普通に所蔵して貸出するか経過が楽しみだったりします。
あっ、もちろん、所蔵しているけど貸出禁止資料になっている館もあるかとは思いますが。

前回も書きましたが、図書館で貸出をしていない資料はたくさんあります。
が、それは、図書館が運用上(百科事典の途中が貸出されていたり、壊れやすい資料だったり、雑誌や新聞の最新号だったり)、あまり貸出するのはどうかな?と思って図書館が自主的・主体的に貸さないことを決めた資料です。
雑誌の最新号だって一夜貸ししている図書館もありますし、一概には言えませんけど。
しかし、著者のお願いだから貸出さない資料というのは受動的ですし、例を見ないことです。

法的には前回のもそうですが、著作権者に図書館の貸出を左右する権限はありません。
図書館側がそのお願いの意思を汲むか無視する(語弊があるかな?)かです。
図書館が図書の貸出を行えるのは以前も触れたと思いますが、著作権法38条4項で、非営利無償の場合は複製物の貸与が可能とされているからです。

また、ベストセラー大量貸出問題については、「公共図書館貸出実態調査2003」(http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/report0403.pdf)で解決済み(?)ですし、新刊の貸出制限云々は(CDにも図書館においてはないですけど)根拠法がない状況だったりするんですけどね…
ある意味義理人情の世界でしょうか??

確かに、この財政難などで、資料費は激減していて、図書館としては買いたくても買えない図書がある状態で、なんとか所蔵したい資料を優先的に選んで購入していますから、最初の選択からこの手の図書は落ちてしまうような気がします。
今回の『雑司ケ谷R.I.P.』のように、大きな話題になれば、作者の意図とは別に宣伝効果も出て売れるパターンも出てくるでしょうが、それも後になるにつれて、扱いも小さくなると思うので、何匹目のドジョウまで宣伝効果がうまくいくかって見方も面白いかもしれません。

作家さん側がもし本気でどうにかしたいならば、前述の著作権法38条を変更する必要が出てきます。(って話も過去にありましたよね…映画の著作物だけでなく書籍等にしたいって話。)
他国で見られるように、その保障を国が基金を作ってその辺の補償をする制度が確立されているなどあればともかく、先に補償を要求されると反発せざるを得ない状況かと。
例えばDVDなどの映像著作権に見られるような補償金云々になった場合、図書の購入冊数はおそらく1/3以下になります。(例えば300%割増の場合だと)
で、補償金を処理する機関なんて、作る気なんて更々ないでしょうから、同じ轍を踏むことになるでしょう。
もちろん、DVDの時に見られるように、中身のデータについての補償なのかそれを焼き付けた媒体としての契約なのかによって、ダメージを負ったページを捨てて補償金なしでそのページを複製できるかどうかなどの図書館としてのうま味も出てくるかもしれませんが。

公貸権の話をするとまた長くなりそうなので、話を戻して。

そもそも、図書館の存在理由と商業主義の考えは相容れないような気もします。
図書館の貸出数をただ単に増やしたいなら、予算の続く限り、人気ベストセラーとその複本だけを買っていれば格段に増えるのはわかっています。
商業主義的に考えると、図書館は収入がほとんどないですから、支出を減らすためにブックオフなどで資料を仕入れれば費用対効果も上がることでしょう。
まぁ、今後はわかりませんが、そんな図書館はないですから、まだ機能しているのでしょう。

ただ、その一方で、税金で運営していることから、地域住民の要求を全く聞かないというわけにもいきません。
図書館についてよくわかっている住民ばかりではないですから、自然とマスコミで取り上げられた本に飛びつく人も多く、リクエストとして図書館に要求してきます。
で、自分の予約が半年後くらいになると知った利用者の中には以前も触れましたが「なんでもっとその本を買わないのか」って文句を言う人もいて、それは近年日常茶飯事だったりします。
また、これも書きましたが自分に過失のある弁償本ですら、「ブックオフで買っていいのか?」「保険で何とかならないのか?」「俺は税金を払っているんだ」なんていう利用者もいますから、「予約しないで購入をお勧めします」と言っても買う人は少ないかと…
もちろん、逆に、新刊が出て自分で購入して「あ、これ予約いっぱいになっているでしょ?私は読んだから寄贈しますね」って一度読んだきりの話題の本をくれる利用者もいますがね…

それら(図書館を利用するから書籍を買わないのか、そもそも書籍を買わないのか、いくらぐらいなら買うのか等)の総合的で多角的な調査って最近はみないので、是非やってほしいほしいなぁ。

xiao-2さんの『みききしたこと。おもうこと。』での『図書館で予約の多い本は?』(http://d.hatena.ne.jp/xiao-2/20110518/1305733056)でも触れられていますが、図書館側でなぜ買わないのかという質問や調査は難しいですから、やはり何か新聞等での調査があると良いなぁと私も思いました。

質問を加えるとすると、「なぜ、この本を(買わずに)予約したくなったのか?」なんかもあると面白いかも…

そういったことをうまくまとまっているところを見つけられなかったので、

・図書館の利用者は3割
参考:時事通信社(http://www.jiji.com/service/yoron/result/pdf/071121.pdf)など
(過去に拙ブログのエントリーでも図書館を利用しない人が7割の話を書きました(http://c-town.way-nifty.com/blog/2008/11/post-e283.html))
(毎日新聞での第62回読書世論調査の件)

・新刊の出版点数は増えている
参考:不破雷蔵さんのエントリー『新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる』(http://www.garbagenews.net/archives/1565633.html
(色々数値が出ている中で一番わかりやすかった)

・が、売り上げは減っている
参考:不破雷蔵さんのエントリー『10年で売上は書籍17.4%減、雑誌は24.4%減に~落ちる売り上げ・上がる返本率』(http://www.gamenews.ne.jp/archives/2008/08/10174244.html

・でも、販売冊数はあまり変化ない
参考:『書店の販売冊数と図書館の貸出数の推移』(http://www.1book.co.jp/002649.html
(『まずは図書館で読んでみて自分に本当に必要な本か見定めしたいという消費者の声があるように感じます。』ここになんか共鳴。そういう使われ方は個人的には嫌ですが。)

・一方、買われる書籍は月に1人あたり300円程度
参考:不破雷蔵さんのエントリー『1か月の購入金額は155円!? 週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる』(http://www.garbagenews.net/archives/1243180.html

・その割には月に1回以上買う人は約8割(!?)
参考:『書店での書籍購入頻度は「月に1回以上」が79%』(http://www.spireinc.jp/news/pdf/071101.pdf

といった感じで見ていくと、もちろん、統計の取り方などで数値の感じが違いますし、最後の調査結果は雑誌も書籍に含まれているようなので、一概には言えませんが、9.7%の人が書籍を読むけど購入しないと言っていますので、『図書館を利用する1/3程度はどうやっても購入しない人なんだろう』と推測できます。
だからといって、残り2/3の利用者が貸出しされないから購入するようになるかというと、月の購入平均が300円だから、新刊単行本だと年2回程度購入しないわけで、年々増えている新刊の中から、2冊を選ぶとなると、外れは引きたくないから、図書館で読んでみて買うか、図書館で読んだから買わないになるか、買ってみて外れだったから中古書店になるか、千差万別十人十色ですが、売り上げにはどのみち貢献しないと思われます。

ということであれば、今や文庫も300円じゃあまり買えない時代になりましたが、そのくらいであれば、図書館だと2週間は回ってこない場合が多いですから、自分で買っちゃう人も増えるでしょうね。
まぁ、そもそも、図書館を利用している人は3割ですから、そこに目くじら立てるより、残り7割に売りつければ良いのでしょうが。

最後に、図書館が電子書籍に対応し切れていない現状であれば、図書館での貸出が気になる作家さんは電子書籍で販売すれば良いとも思いますが、まだ過渡期なので、不正コピーが蔓延ってしまい、デジタル化しやすかったCDに似た状況になるのではないかと思っています。
現状でも、最近は書籍を電子化するのも比較的楽になってきて、自炊云々が問題になってきていますし。
不景気になったら新刊の出版点数が上がるのは、見てのとおりなのですが、その中から利益をあげるために、本の内容の良し悪しに関わらずメディア戦略が重要となっていくことでしょう。
今も、メディアに取り上げられれば内容はどうであれ、売り上げが高く、図書館での予約も殺到するのは多くあります。
将来的には、図書の内容ではなくその特典を目的とさせるような戦略的な販売をするケース(雑誌やCDなどで見られていますけど)もあったり、多作家1作品や同じような本の大量投入とかも出てくると、図書館側としても一層の苦労をしそうです。

ある時は卵を産む鶏に、ある時はナスや胡瓜を作る農家に例えられている作家さんなのですが、まぁ、あながち悪い例ではないなって思うこともあります。
ブロイラーで卵を産み続けさせられて、産まなくなったら処分される鶏も見ますし、規格通りの真っ直ぐな胡瓜などを生産し、より安い野菜に太刀打ちできなくなってやめていく農家の方々も見ます。
もちろん、丹精込めて育てられ、質の良い卵を産む鶏や美味しい野菜を作る農家の方々もいて、多少高くてもそれを購入するお客もたくさんいます。
その例えでいうと、図書館は農協でしょうか?でも、売っちゃいないから、品評会とか見本市とか試食会ですかねぇ?
いずれにしても、個人的には、読み続けられるものを置いていきたいものです。

色々な調査からも、買わない人は絶対に買わないのですから、お金を出して買ってでも読みたいという図書が少なくなっているのか、買われている本は図書館の有無にかかわらず買われていますから、「図書館が貸すから云々」という作家さんは単に負け犬の遠吠えなのかわかりませんが、共存共栄は表面的であっても望まれていることなのですから、図書館を利用しない7割の人に文学の面白みを伝えてもらえれば、図書館利用の3割を目の敵にするより、利用しない7割をターゲットにすれば利益は大きいですし、図書館側もその7割が本読みたい状況になってくれると利用も促進できるので良いのですけどね…

また長くなった…泣

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