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館内閲覧だって利用の形態ですよね?

数日前(書いた時は…笑)の毎日新聞の地方版の記事『ばってん日記:不便な図書館/熊本』(http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/20110718ddlk43070206000c.html)を読んでみて、さらっと読んだ時と、深く読んだ時にに受ける印象が違うなぁって思ったので、コメント。

まずは、さらっと。
1.熊本県立図書館と熊本市立図書館で、とある郷土資料扱いで貸出していない資料があった。
2.ネットで調べてみるとその資料は福岡県立図書館や福岡市立図書館では貸出が可能だったので取り寄せたいと思った。
3.しかし、熊本のどちらの図書館でも所蔵としてはあるので、取り寄せられないとのことだった。
4.それって何とかならない?

ということなので、相互貸借のルールにひっかかったんだね…と、わからないこともないなぁって気分に一瞬させられるのですが…

ちゃんと読むと色々なことを思いめぐらせることになります。

A.『利用=貸出』?
『図書館』と言えば、「本を借りるとこ」って半数以上の方が答えるだろうと思いますけど、以前も触れましたが、借りるばかりが利用でないし、資料だって借りられない資料もたくさんあります。
なにも、熊本の2館は「所蔵はあるけど見せません」って言っているわけでないのだから、中を見ることはできるはずです。
記者も書いていますが、30年前の資料なんですから、もしかして「貴重書なので…」とか「修理中なので…」ってことはあるかもしれませんけど、基本的には閲覧利用可能だと思われます。

また、該当資料が郷土資料扱いされている資料ということだけしかわからないので、一概に言えませんが、図書館のほとんどは複写サービスもやっていますので、必要な部分を複写するのも手だったんじゃないかと思いますが…
どうも、この方は『利用=貸出』で図書館を考えておられるんじゃないかと思ってみたりもします。

それと、もしかすると貸出用の複本が過去にあったかもしれない(30年間でなくなったり使えなくなったりしたとか…)とも考えると、「なんで貸出用がないんだ」的な書き方はちょっとどうかなぁ…

さて、これに似たケースが、うちの館でもありました。
県内ではあまり所蔵されてないだろう郷土資料で、やはり1冊しかないので、禁帯扱いのものを、某放送局の番組作成責任者が借りたいと。
その時は、『取材扱い』という特例で貸出したのですが…返却の督促をして約1カ月…最終的には戻ってきましたが、ものすごく心配になったことがありましたので、「放送・報道関係にはあまり貸したくないなぁ」と少々トラウマだったりします。笑

児童向けの図鑑などに多いのですが、「これは図鑑だけど貸出用にしよう」とかの判断は分かれることがあります。
「どこそこの図書館では貸出できるのだからなんでできないんだ」って話もわからなくはないですが、その館では参考資料として貸出さないと決めたのだから、それはそれで尊重されるものだと思うんですけどね…

『利用=貸出』という意識で図書館があるのであれば、逆に館内の資料は「すべて貸出可能です」が理にかなっています。
でも、そんな館はまずないですし、貸出されない参考資料や郷土資料についての一定の貸出しない暗黙の了解はあるのだと思います。(雑誌の最新号一夜貸しとかもまれにはありますけどね。)

まぁ、そういうことは理解しつつも、やはり自分の借りて読みたいものが貸出できないと思うと、「何とかならない?」って気持ちもわかります。
けど、今回は相互貸借のルールに基づいた対応ですし、所蔵資料が閲覧のみの利用ではあったけど、利用できるわけだし、郷土資料の禁帯は理解してもらっているようなわけですから、「いちいち記事にすることか?」って思ったりしますけどね。

ただ、利用云々の話になると、無限ループのごとく、どこまでを無償と考えるかとか、結論の出ない日々ではありますが。

B.所蔵資料は他館から借りられない?

おそらく、記者の方はここの部分が不満なのでしょう。
この部分は相互貸借の暗黙のルールとして、「所蔵している資料は借りない」というのがあるのだろうと思われます。

相互貸借は図書館の相互協力のもとに運用されますから、「所蔵資料があんのに、なんでうちの館のが必要なん?」って思うこと多々あったりします。

もちろん、所蔵資料でもOKだと、ベストセラーなどで人口が少ない館などの資料が地元住民の目に留まらないままで他館に貸出されたりするってこともあるとは思われますので、原則所蔵資料はご遠慮いただくのですが、こちら(私のいる地域)ではその辺は意外とアバウトさがあるかもしれません。

読書会グループの複本を集めるなどは普通にありますし、聞いた話だと「そちらの館の資料の方が(館が新しいので資料が)きれいかと思って」って話もあったりするそうですし…(笑)
いや、もちろん、そこまでされると、断るかもしれませんが。

例えば、所蔵資料があっても、あることにはなっているけど、不明なのでとか、督促をガンガンしているけど、長期未返却なのでとか、ある程度ちゃんと理由がある場合であれば、良いかと思いますけどねぇ…

郷土資料に限り、所蔵資料があっても、貸出可能なものが借りられるようであればOKというルールになると、おそらく、この記者さんも願ったり叶ったりなんだと思いますけど、以前も書きましたが、相互貸借資料って、原則は『まずは購入努力をして、手に入らない理由があるときのみ、持っている館の協力で借りることができる。』のはずなんです。
が、相互貸借で移動される資料の量が年々増えているのは、それに反して、資料費が削減され、優先順位の低い資料は「どっか買ったら借りよう」という意識が蔓延しつつあるからなのでしょう。

あくまで、相互貸借は、仕方なくするものなんですから、相手の親切に胡坐をかくものではないですし…

そう考えると、「所蔵しているから、他館から借りるのはちょっと…」っていう答えは、図書館的にはルールに基づいた回答なのかなぁと思ったりしています。

それにしても、今回の事例(?)、なるほどと思ったのは、自分の自治体の郷土資料は複本がなければ、基本的に禁帯なんだろうけど、他地域であれば、借りられるということもあるということは、確かにそうで、自地域以外の資料はじゃんじゃん貸出するっていうのもありかもしれないですね。
ただ、この件の貸出可能だった理由は、複本があったからなのか、自県ではなかったからなのか…わかりませんね。

ただ、福岡の図書館が複本を持っていたと考えると、熊本の両図書館だって、複本があったと考えるのが普通ですよね?
自地域の資料だから需要も多く、貸出用資料がなくなってしまったと考えるのも普通かなぁと。

C.越県の相互貸借

地域によっては、自分の所属県でない地域からも、県レベルで協定が結ばれていて、利用者はお金がかからず借りられる場所もあるようで、それはそれで羨ましいなぁと思ったりします。
自分の都道府県内であれば、県立図書館が運用している配送車や、配送費県立払いとか、相互に費用負担とか、同じ都道府県内図書館から借りる場合の利用者負担0はよくある話です。
でも、協定がない県同士の場合は、通常、郵送の金銭負担が発生します。

場合によっては、県内になければ貸出不可って言っちゃっている館もありますが、どうなんでしょうね…

郵送費用は、往復利用者負担が多いような気もしますが、そんな統計はないでしょうかねぇ?
図書館で相互負担で相殺するとことか、全部借受館負担だとか、色々なケースは考えられるのだけど。

あ~、そういや、そんなに古くない(1年前未満の)新書を貸して欲しいってFAXが隣県から来たことがありました。
郵送費往復したら、その新書買えますから…ってお断りしましたが。笑

D.税金で所蔵した?

いやいや、郷土資料だと、寄贈資料かもしれないよっと。
寄贈資料だと、まぁ、「2冊いただけると嬉しいな」的なアピールはしますが、1冊だけだと、やはり禁帯出扱いになるんだろうなぁ…
もし寄贈者が著作権者だったら、もらうときに、「貸出用に勝手に複製して良いですか?」って聞いてもらうと面白いかも~☆

E.30年前の本のリクエスト

んー、対処としては良いのだろうけど、普通は購入できないよなぁって思いますよね。
それなら、新聞記事にタイトル書いて、「もし家にあれば、熊本の各館に寄贈してあげて」って記事にしてあげるのが、手っ取り早いかもしれませんね。

F.書庫で眠っている?

確かに、書庫で眠っているような資料もありますけど、動かないでそこにあるということは、あまり利用がなかったので、保存しているってことでしょうから、「ちゃんと保存していてエライ」くらい書いてもらいたい気分だったりしますけどね。
書庫に限らず、書架で全然動かない資料ももちろんありますが、大抵の図書館員は、「どうやって動くようにしようか」とか「どうやって日の目を見るようにしようか」とか「10年後くらいには利用があるだろう」と思いながら、創意工夫を凝らしているわけでして、寝かしているわけではありません。
もちろん、この記者の方のように、「利用=貸出」で、資料に眠る時間を与えないような図書館ばかりですと、「行ったけど読みたい本なかったよ…」ってことになるのかなぁ?と妄想したりしています。

G.本の幸せとは?

私自身、本になったことがないですから、よくわかりませんが、図書館で埃をかぶっているのも嫌ですけど、たくさん利用されて手あかをベタベタにされるのも嫌だなぁ。
温度と湿度が行き届いた場所で、たまに手に取られながらも、優しく扱われて、後世まで残されていくっていうのがいいかなぁ?と思ってみたり。
まぁ、人間の幸せの価値観が違うように、「ガンガン利用されて役目を終えるのが本望」っていう本もいるかもしれませんし、「折り目が付くから人に触られるのは嫌」って本もいるかもしれませんが。笑

H.著作権法の壁

図書館が別の図書館の求めに応じて絶版などになっている資料を複製することは可能ではありますし、保存のために必要がある場合複製できるのは、わかっていますけど、30年前の資料が絶版であっても、所蔵はしていますので、できないでしょうし、保存のための複製については、なかなか権利団体さんと意見がちょくちょく平行線だったりしています。
今回の件は、一般流通していた郷土資料なのか、普通に頒価不明な郷土資料なのかわかりませんが、せめて、一般流通していない郷土資料だけでも、「利用者の利用(貸出)に供するために必要がある場合」といった感じで複製できると良いのでしょうけどね。

といったことを考えながら、図書館の記事を読んでいる日々。

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