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2011年8月の1件の記事

今の図書館の改善は可能か?

丸山高広さんのブログのエントリー『図書館を改善する3つのポイント(私案)』(http://maru3.exblog.jp/13208438/)に触発されて(?)というか、実際にはコメントを付けようと思ったら字数制限で書けなかったので、ここまで変わらない感じで進んでいた図書館を改善するということは、非常に難しい話で、さらっとは書けなさそうですし、私はそうそうあちこちで言っていませんが(もちろん、同業の方々とのおしゃべりレベルでは言います(笑))、拝読して思ったことを書いてみます。

『1.公共図書館の意思決定機関を明確にする』について。
これ、ものすごく、わかります。
現在、ほとんどの公立図書館は、直営、指定管理に関わらず、自治体がそれぞれ設置しています。
で、そこに働く職員や資料の購入費は、基本的にその自治体の税金でまかなわれています。
もちろん、指定管理費も自治体から払われるものは基本的に税金です。
なので、図書館は予算というものに行動が制限されるということは、当たり前の話です。
でも、その中では意思決定は可能です。

図書館の運営については、市の方針ということになりますから、最終決定権者は首長ってことで良いと思います。
が、一挙一動全てに対し、お伺いを立てるのは難しいということになります。
だから、図書館長にある程度の裁量権はあるのですが…
全国的に見て、館長クラスはどのレベルですかねぇ?大所帯だと部長ってこともあるでしょうが、課長かその下ぐらいが一般的でしょうか?
そうなると、公務員系の職員であれば、上司の命令に従う義務が足かせになります。

いくつか聞いた図書館の例をあげると…
・運営規則上できないことをしたい利用者が出来ないということに腹を立てて、その上の部局で散々わめいて、上司から館長に「例外で認めてやれ」って電話がある。
(もちろん、特例条項として、よく館長が認めた者とかありますけど…)
・自分の所属する政党紙を図書館に置くように、館長とその上層部に掛け合う議員がいて、収集することにする。
(結局、公平性を出すために主な政党紙を収集することに。もちろん、政党紙も情報源ではありますから、あればあったで良いですが、経験上、読まれることが少ないので、利用者からは「政党紙なんか置かないで、一般紙を1つでも増やした方が良い」と言われるとのことも。)
・上層部の親族の営業に影響するためとか、自治体内の業者団体から首長宛のクレームが多いので、資料の収集に偏りが出る。
(図書館の自由に関する宣言なんか知ったこっちゃないのでしょう。)
・指定管理についての検討でメリットとデメリットなど比較検討レポートを出したら、「デメリットはいらない」と館長より上の上司に再提出を求められる。
(よくある話でしょうが、そこの館長さん曰く「費用削減を最大のメリットして書いている記事が多いので、調べてみると人件費分の費用削減効果(削減した分で資料費を増やしても)でしかないというのに、検討とは名ばかりで、指定管理ありきのメリットばかりだと、『私達は費用分の仕事をしていないので指定管理がいい』ってことじゃないか。」と。)
・プラスにならない光交付金。
(財政課や首長が言う表側は「図書館に交付金をこれだけ充てました」だけど、その内情は「その分、通常予算を減らしたけど」とか)
他にも色々あるのですが…

要するに、自治体内の一組織だと、意思決定がぶれることがあるということが問題だったりします。
もちろん、丸山さんがおっしゃるような、諸外国のような方針決定機関があって、という方法もあるでしょう。
(私は不勉強なので、わかっていないのですが、その諸外国のその機関は自治体とは別機関で各自治体にあるのでしょうか…)

日本の地方自治的な形からすると、自治体の総合計画みたいなものがあって、教育計画みたいなものがあって、図書館の運営指針みたいなものがあるので、上記のようなぶれは多々あっても、抽象的な表現であっても、方針はあります。
それを現場監督である館長が遂行してるわけですが、そこに日本の地方自治体特有のしがらみがあるので、特に影響力や深い図書館愛(?)がなければ、その上を攻略された時点で曲げざるをえないこともあるんだと思います。

で、私は図書館業界は自治体行政機関とは別にして、例えば全国の図書館が1社の支社のようになると、意思決定が全国規模で統一され、図書館長は現場監督として専念できると思うのですけどね…
そこまでいけば理想ですけど、現状からの改善とすれば、せめて、図書館長は図書館のことをよく理解している人をつけ、その館長は図書館運営について首長といえど、言い返せる人なら、普通に改善されると思いますけどね。

まぁ、それを実現するためには、結局、法的根拠が必要だなぁと認識しています。(最近は法的に根拠がなければテキトーに流されちゃうし。)
第一段階ととしては館長の有資格者条項を復活させるですかね。
もちろん、図書館への理解と図書館愛(?)がある人であれば、無資格でも良いのですが、それを判断する尺度もないので、いっそ、上級司書とか認定司書なんかやめて、認定館長制度にしちゃうってのはどうなんでしょうね。

そして図書館法で『館長は認定館長でなければならない』的になれば、明確になるのではないでしょうか。
館長の考え一つで変わった図書館もありますし。

『2.ライブラリアン(司書)とクラーク(事務員)を置く。』について。
こっちは、そう長くはならないと思いますけど…笑
以前いた図書館はそれこそ全部担当で、奉仕担当の仕事から庶務担当の仕事まで、挙句に機器の修理やら設備のメンテナンスまでやっていたりしましたからねぇ…確かに事務仕事を誰かにとは思ったりしました。
でも、ある程度の館になると、庶務担当とか管理担当とか名称は異なるけど、伝票云々の作業や本庁舎への連絡などやってくれる事務方がいます。
なので、文字通りに捉えると、「あれ?すでに(事務員が)いるんじゃない?」と思えるのですが…

今私のいる館では、庶務仕事はそういう感じになったので、かなり減りましたけど、奉仕担当の業務は相変わらずほぼ全部という状況は変わっていません。
でも、私はそれはそれで良いと思っています。そうでなければ、「○○を担当している△△さんがいないので、わかりません」的な状況が多発してしまいますし、それは土日など人が半減(交代休なので)しているときなんかに起こりえると思いますし。

しかしながら、奉仕対象人口が多くなれば、仕事も増えますし、利用者が増えれば色々な問題も起きてきます。(この辺の話もいつか書きたいなぁ…)
また、システムを扱う統計調査や問い合わせに関する回答などは、事務員の方はわからないことも多々ありますので、結局回答はこちらで作るということに。
それに加えて、単館であれば、意思疎通がしやすいのでしょうが、複数館ある所だと、各館の意見調整(同一自治体の館でありながら。)など、やはり仕事は増大しています。

以前も書きましたが、半数以上が臨時職員である状態ですので、責任ある判断が必要なのも正職員がすることになりますから、直営は直営なりに面倒だったりします。
もちろん、臨時職員が責任がないというわけではありません。でも、クビを切られやすい半面、辞めやすいこともあり、問題が起きた時に「辞めればいいですよね」とその後の後処理だけ残されてしまうケースも考えると、ため息です。

もうひとつついでに書くと、人的に余裕のある図書館は良いのですが、余裕のない図書館の場合は、新しいことをしようと思っても、それがただその人の負担になることもあるので躊躇したり、自己研鑽を兼ねて研修を受けに行きたくても「その日は(仕事やカウンター業務が)まわらないからだめ」と言われて月に一度出られるかどうかという場合もよく聞きます。
そういうのは、各館の事情でしょうし、現場は大変だけど、若手職員を送り出すような館もなくはないですが、常にぎりぎりの人員配置で、一人でもアクシデントで長期離脱したらサービス業務が増大するようなとこもあります。

なので、望ましい基準はいくら宣伝しても「そうだねぇ、そのくらいいればいいよねぇ」と言われるくらいで、法的根拠でもない限り人員確保は難しい現状だなと思っています。
何も図書館に限ったことではないですが。

なので、人口規模に合わせて、『図書館業務を担当する者何人、図書館事務を担当する者何人』という条文が図書館法に入らないかなぁと思っています。

『3.資金調達(ファンドレイジング)の道を拓く。』について。
うんうん、よくわかります。
わかるのですが、今の日本のNPOで他の収入もなく職員が普通に家族を養っていけるところってどのくらいあるでしょうか?
もちろん、切り詰めたり、共働きでしっかりやっている家族も知っていますが、NPOの業務+アルバイトというパターンが多いかなぁと。(私の周りだけかもしれませんけど)
確かに、ある程度大きな組織だとなんとかやっていけている団体も聞いたことはありますが、日本の場合は難しいのが大半(代表は別に収入のある人だったりすることが多いですし)のようで、まして図書館の事業のみでやっていくのは至難の業レベルなんじゃないでしょうか。
(短期事業であればまだしも、長期的に雇用と事業をしていくのであれば。)

図書館を運営する事業体が、例えば飲食店展開を成功させたとしても、それはそもそも飲食店事業の成功ですから、図書館で、となると何でしょう?
大きな収入源になりそうなのは有料講座の実施でしょうか?
公民館講座レベルの有料はほぼ実費ですから、もっとお金を払っても受けたくなる講座…有名な人の公演などでは逆に出費もかさみますし、パソコン講座などは民間のノウハウの方が有用かもしれませんし。

図書館グッズの販売とかだって、なんか販売事業って感じもしますしね…

私は、以前も書いたと思いますが、利用の対価の『利用』の定義をすることが第一歩で、利用は私が考えるには閲覧までで良いのではないかと思っています。
つまり、貸出は有料って話。
図書館に来て、図書館で必要な情報を得られる部分に関しては、無料で図書館の意義は満たされると思いますけど…
貸出については、借りられたことで他の利用者が利用できない、つまり占有状態的であるという判断で、その権利を金銭支払いによって得る…
個人的な極論ですが、私はそれでも良いと思っています。
そうなると、貸出至上主義だとか言われたとしても、大事な収入源になるわけですし、その貸出料に公貸権料分を上乗せ…
まぁ、それが図書館として良いかどうかは全然別にして、そんなのもありかな?って思ったりすることもあります。

図書館とは離れた事業を展開することで、安定した収入を得られるというのであれば、逆にそっちメインでやった方が良いと思います。
寄付金を募るとしても、大口の出資者が常に出資してくれるとは日本では難しいかと思います。
まぁ、図書館とは別事業を展開して、それで得た利益を図書館にまわす場合、それが大口の出資者というのでも良いのですが、新刊雑誌の出資云々の記事を見ていると地方だと厳しいなぁと思えます。
難しいのであって、無理ってわけでないですが、スタッフはボランティア有志で資料は寄贈での方ができる確率としては高いかな?

安定収入も考えると、やはり前述のように自治体から独立した機関にしつつ、その地域住民に貢献するということで、自治体の歳入の一定割合をもらえる仕組みになると良いとは思います。
となると、やっぱり法改正でしょうか…笑

ということで、図書館を改善するポイントとしては、『図書館法に改善できる仕組みを盛り込む』が一番手っ取り早いと思うのですが、おそらく急に対応できないとかなんとかで、「当面の間、置かないことも可」って但し書きが付け加わって、結局変わらないんじゃないかというオチになりそうでこわいです。

最後に、私が思うに、図書館の改善は図書館長の熱意と部下への配慮が満たされることによって一気に変わると思います。
館長の熱意ばかりで部下の負担が増えてしまっている図書館はいつか瓦解すると思いますので、熱意を持ちつつも、比較的良いと思えることを部下がやりたいと言えば「俺が責任取るからやってみろ」とか、その人に負担が増えないように配慮を欠かさないような館長がいれば十分変わるでしょう。
業務に関してはその人選などがキーポイントで、図書館業界としての改善としては、机上の空論だったとしても、望ましい図書館のベースにプラスして…というか、もう少し細かく定義して、逆算のシミュレーションができるようにする必要があるのではないかなぁと思っています。

それにしても、どうして図書館法はせっかく図書館のためだけの法律なのに図書館に有利には改正されないんでしょうか…

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